今日という日は残りの人生の最初の日

人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

バッドエンドはハッピーエンドに成り得るか ―『閉花予想』を聴いた感想

実家から帰ってきました。

今日はもう寝ようかとも思ったんですがせっかくほろ酔いなので書きたいなぁと。
眠る前の暇つぶしにどうぞ。
 

■閉花予想 feat.アサイウミ

▼Lyric&Music:アサイウミ様

IllustChigu様

Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.


▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(アサイウミ ×savasti × 田口淳之介

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.9 -閉花予想-

 

■田口さんによるレビュー

・すごい青春を感じる。自分の学生時代を思い出す。歌詞の「君と歩くこの帰り道もこれで最後になるだろう」の部分に、甘酸っぱい思い出のようなものは誰でも感じられると思う。その時のことが全てで、毎日楽しくて仕方がないようなのが学生時代あるある。
・自分は学生時代から仕事をしていたのもあって、思い出はあるものの学園ドラマにあるような学校生活は送ってこなかった。その為、歌詞を聴いて「分かる分かるー!」って本気で言えないような部分は正直あった。
 田口「でも実際、これが青春だよなって」
・今会おうと思えばその時の友達にも会えるんだけど、あんまりそういう機会ってない。
 田口「同窓会とかにも呼ばれたことってないんだよねw」(田口さんの場合芸能人だからってのもあるかな…)
・自分の青春時代に戻りたいとは思わないけど、俯瞰して第三者の立場から見てみたいとは思う。
・今の子と自分とでは過ごした時代が違うので、青春時代の思い出も少し違う部分がある。自分の学生時代は辛うじて携帯はあったけど、今の子はLINEだし、自分よりもっと前になるとポケベルとか伝言板とかになる。でも、時代は変わっていっても価値観や人の気持ちはそんなに変わらないと思うので、世代に関係なく共感はできると思う。
・「ハッピーエンドよりバッドエンドが好き」というアサイウミさんの人間性が歌詞の切なさにも表れている。「開花予想」ではなく「閉花予想」なのがミソ。
・今まで仕事においても数々の別れがあったけど、その先の出会いもあった。「これから僕らそれぞれ違う道を歩いて」という部分には、終わりの切なさよりその先にあるものへの希望を感じる。
 

■制作過程

アサイウミさんは田口さんからのオファーによる参加。
・曲制作にあたって、田口さんが最初にお会いした時のアサイウミさんの印象は「イメージ通りの優しい人」。
アサイウミさんからの田口さんのイメージはリーガル・ハイの蘭丸。初めて生で動いているのを見た時はカッコイイオーラがあった。
・「デモを出すのが遅い」と自分で言った割に、デモを出してくれたのはアサイウミさんが一番早かったという田口さん。でもそこからの練り直しにはかなり時間がかかった。
・ジュウゴノシンゾウのメンバーを見た時に、ダンスミュージックを主としたオシャレな曲を書く方が多いと感じた。その方々と被らないように、ピアノとギターを前面に押し出した自分らしい曲を書こうと意識した。(このコメントを喋っているときに雨音に遮られてるの面白過ぎた)
 田口「一回整理していい?w」
・制作時は桜の時期だったので、桜の終わり際の切ない雰囲気をAメロとBメロで描いた。
・ラスサビの転調部分は田口さんも歌っていてすごく盛り上がって歌い甲斐があった。
 

アサイウミさんのこと

・爽やか切ないピアノロックをテーマに曲を作っている。ピアノとギターを使った楽曲を得意としている。
・歌詞には季節感やストーリーを取り入れて作っている。
 田口「アサイウミサウンドっていうかさ、スタイルが一貫してますよね!」
・「空とラムネ」は電波工作でも紹介した経緯あり。
・ボカロPデビューは2018年。対談で一緒に出演したsavastiさんと同期。
・楽曲制作はピアノから作ることが多いが、アコギから始めることもある。リリックよりメロディーが先行で、コードから作ることが多い。昔からのJポップが好き。
 アサイウミさん「中島みゆきさんとか結構好きでw」
・楽曲「夏が嫌いだ」は滅茶苦茶爽やかなピアノロックなのに、その中で「夏が嫌いだ」を連呼するのが印象的。
 田口「どういう気持ちでそのメロディーにその歌詞つけてんのかなってw」
 アサイウミさん「小説や映画からインスピレーションを得ることが多いんですけど、バッドエンドの作品が凄く好きで…」
 胸にモヤモヤが残る感じが好きなので、歌詞とサウンドとのギャップでその感じを出したいと思っている。
・他の楽曲で気になった曲は平田義久さんの「stay with me」。
 アサイウミさん「二人の歌声が上手く重なり合ってたので、それが凄く面白くて良い楽曲でした」
 

アサイウミさんのオススメ楽曲

▼空とラムネ


▼夏が嫌いだ


■「閉花予想」における田口さんのパフォーマンス

・個人的にアサイウミさんは「夏唄」というイメージが強いので、「春」の季節感を前面に出したのがリリース時期に合ってた。
・パフォーマンスで印象的だったのはやっぱりジュウゴノシンゾウLIVE。バンドスタイルで生演奏、という音の贅沢さが全体の厚みを底上げして、春の息吹のような力強さが強調されていた。(飛鳥さんのピアノ演奏が良い味出してましたよね。)
・「君が僕にくれたこの景色が」の部分でターンした時は桜吹雪の幻覚が見える。ダンスパフォーマンスではないけど身体全体で歌うような彼にこそ出すことができる雰囲気。
・パフォーマンスとは少し違うけど、配信でのコメント芸もこの曲ならではの特徴がある。いつからか画面全体に桜弾幕が流れるようになって、ライブだけではなくニコ生でも「閉花予想」が流れるとコメントが桜吹雪と化す。このコメント芸はニコニコの醍醐味だと思う。
 

■総括

アサイウミさんは電波工作の頃から個人的にもお気に入りのボカロPさんだったので、今回のアルバムのメンバーに入っていたのはすごく嬉しかったですね。
田口さんが「今日のボカロ」タグで取り上げていた「空とラムネ」は、ピアノの旋律の美しさに感動して何回も聴いてしまいました。
その後対談で話題に上がった「夏が嫌いだ」は本当に歌詞のネガティヴ感に中毒性があって、これも最近ずっと聴いてます。
季節感のある曲は大好物なので、「閉花予想」は春の唄として懐かしさを今後覚えていくような楽曲に昇華していく予感がします。
 
「ハッピーエンドよりバッドエンドが好き」というアサイウミさん独特の価値観。
田口さんはそこはイマイチ共感できない部分があったようで…「やっぱり終わりが気持ち良くないと!」って彼が仰っていたのは私も分かりますねぇ。(年取るとハッピーエンドが好きになる説)
でも、どんなに悲しい結末であったとしても、物語としてきちんと伏線が回収されていて、ラストまでの布石として必要なものであればバッドエンドも悪くないと思います。
逆に、今までの展開を丸無視したような無理やりな終わり方だとどんなに大円団でもモヤモヤが残るなあ…
例として、「キャラが死んでしまう」という展開はバッドエンドの一種ですが、意味不明な復活なんかされると「そこは死んどけよ、展開的に」なんて思ってしまいます。(酷い)
 
基本的に、物語と言うのは所謂書き手が「これで完結です」と宣言しない限り続きがあり得るものだと私は思っています。
小説には続編があるし、アニメには二期があるし、ゲームだとⅡがある。
田口さんがタグラブでも語っていた「終わりの切なさよりその先にあるものへの希望を感じる」っていう感想は、この「閉花予想」にもそういった「続編」が含まれているように感じたってことかな。
「閉花」っていうと桜の終わり際を指す言葉で、ちょうど卒業シーズンの「終わり」を感じさせる時期でもあるんですが、今年終わった桜も来年にはまた咲くわけだし、卒業は人生の終わりではなく寧ろこれからの始まりの前段階ですからね。
よってこれは決してアサイウミさんの好きな「バッドエンド」ではないんじゃないかなと思うのが正直な所感です。
 
私は田口さんほど稀有な学生時代を過ごしてはいませんが、あまりその頃に良い思い出はないので、学生時代の卒業に悲しさや切なさを感じたことは全くないです。
けど、田口さんが前の事務所を「卒業」するときは本当に悲しかったし切なかったんですよ…。ここに来て初めてその感覚を思い知りました。全く罪な存在ですね。
例の11月から3月までの言いようのない感情は今でも忘れられません。「終わりが近づくほどに綺麗になっていく思い出」って歌詞がある意味では突き刺さるような期間でしたよねえ?(と、その頃からのファン勢に問う)
そして4月にあっさりSNSに姿を現したのは、今思えば彼の芸能活動の「二期」への予告だったんだなぁと思えて少し笑ってしまいます。
 
その「二期」の終わりはあまりにも悲しすぎて、納得いかないバッドエンドだった…と大多数の中ではそう締めくくられていますが、それでも作者本人が「これで完結です」と言い切らなかったところに僅かな希望を見出していた方もいたのではないでしょうか。
バッドエンドにしたってあまりに雑な終わり方なので、そこはきちんと回収してもらいたいという意味で、私は一旦続編を待つことにしました。
そして、そこから少し(とも言えない)期間を置いて、本当に色々あったけども、今はこれまでと比較するとかなり常識破りな三期に突入しているようです。
一期からは時代がかなり変化したので、あの頃からは考えられないような演出やストーリー構成で個人的にはかなり面白い展開になっています。かなりの読者が離れてはしまいましたが、私個人はここまで見届けて良かったなぁと。
 
一期が盛り上がった作品ほど、その続編で初期のような盛り上がりを取り返すのは難しくて、「面白いけど一期ほどのワクワク感はないかな」という感想が並ぶのが一般的ではあります。
それでも作品が続いていく限りはもう一発当てるチャンスはいくらでもあって、少し情熱が薄れていた読者も展開によっては戻ってくる可能性があるんですよ。
…えーっと、回りくどい表現をせずに言うなら、彼にはもう一発咲いて欲しいと思うわけです。
 
その年に散った桜も、来年にはもう一度必ず咲くことができる。
それは当たり前に起こることではなく、周囲の環境から守ってくれる様々な力によって桜の木が冬を乗り越え、再び春を迎えることによって起こる奇跡の現象。
 
その時はバッドエンドであっても、時間を超えてハッピーエンドを迎えることができる”強い生命の力”を感じるような、美しい楽曲でした。