今日という日は残りの人生の最初の日

人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

孤独の三原色 ―『Stay True』を聴いた感想

お久しぶりです、アンです。

本日はリリース記念日ということで、久々に楽曲レビューを書きたいなあと思いながら夜勤に励んでおりました。
どうやら昨夜はお祭りだったようで…こういう時、どうして自分は深夜の仕事なんかしているのかと自分自身が疎ましくなりますね…。
 
11月の初披露から大切に大切に今日の日まで温めていたであろう曲なので、しっかりと感想を書き残しておきます。
どうぞお気軽にお読みくださいませ。
 
(※「あの時」のことについて触れる内容になりますので閲覧時はご注意ください。)
 

■Stay True

▼Vocal&Lyric : 田口淳之介


▼Music&Guiter: 水彩画P様

Arrange : S-NA様
chorus : KIRA様
MV Director : TOGUCHI様
Make&Hair : NOBU (HAPP's)様 , 森雅弘様
 
▼MV

 
ティーザー

 

■田口さんによるレビュー

▼曲に込めた想いは色々な場所で語られていましたが、一番核心に迫った話はこちらの記事でされています。

 
(以下、記事の内容の一部抜粋)
・ここ最近の道のりを総括したようなクリエイターさんとの共作。
 2019年11月の復帰作『Voices』でトラックメイキングを担当されたS-NAさん、
 同年6月にリリースした『ジュウゴノシンゾウ』でコラボした水彩画Pさん。
 『Stay True』はそんな彼らの協力によって出来上がった楽曲。
 
・今回は田口さん自身がリリックを書いていることが最大のフック。
 これまでは自分の気持ちをリリックに乗せたことがあまりなかったが、今回は少しさらけ出してみようと思った。
 表現したかったのは『これから自分がどう生まれ変わるか』という部分。

概要としてはこんな感じになりますが、ここから先はもっと重みのある内容を語られています。

上記でもある通り田口さん自身が筆を取って歌詞を書くことは非常に珍しいので、きっとそこに込めた想いをどこかで赤裸々に語ってくれるのではないかな…と思っていました。
しかしながら、思ったよりも大分濃度の高い内容で歌詞の真相を知ることになったなぁ…とこの記事を読んでいて感じましたね。
ここに抜き出すと変な伝わり方をしそうなので、リンク先の記事を直接読むことをオススメしたいです。
 

■制作過程

▼この曲が生まれたのはおそらくこの日です。(本人のTwitterより)

 この時点でかなり仲良くなっていた水彩画Pさんですが、「彼と一緒に制作をしたい」という旨は8月のライブのMCで話していたので、「ついに始まったか!」とワクワクしたのを思い出します。

 
▼そして、おそらくその日の出来事であろう内容のツイートを水彩画Pさんも最近して下さりました。

どんな想いを語ったのかは水彩画Pさんのみぞ知る。
まだこの時はリリックは完成していないと思いますが(大体リリックよりメロディーを先に作ると思うので)、降りてきたメロディーは間違いなく彼の想いにマッチしていたと思います。
 
 
▼そしてそして、そんなお二人の曲についてのトークをちょっとだけ聞くことができました。

(※有料会員のみ視聴可能です。見たい方はチャンネル登録してね♡)
 
田口淳之介ニコニコ生放送 vol.48』に、水彩画Pさんがゲストとして登場。
水彩画Pさん「詞、すごい良かったよね」
田口さん「あ、あざっす…」(照れてるリアクションがとても可愛いの)
水彩画Pさん「すごいね、グッとくるよね」
田口さん「自分のこれまでのこれまでとこれからっていうか…自分の気持ちとして歌っています。あんまり俺、書かないんですよ。自分で自分のこと…」
水彩画Pさん「あんまり書かないからこそ、ファンにとってもね…(良かったんじゃないか、というニュアンス)」

作曲者である水彩画Pさんが彼のどんな想いを受け取って、どの部分のメロディーが最初に降りてきたのかとても気になりますね。

おそらく一番印象的な「離さないで」というサビの部分じゃないかとは思うんですが…
しかし、曲を作る人というのはどんな風にメロディーが浮かぶんだろう。作曲に縁のない私としては最大の謎です。一度でいいからメロディーが生まれる瞬間を第三者の視点で見てみたい。
 

■水彩画Pさんのこと

今更語る必要もないですが、一言で言うと「多分去年彼が一番会った相手」って所でしょうかねぇ…
『ジュウゴノシンゾウ』でコラボして以来、かなり仲良くして頂いているようです。
 
▼こんな感じで知り合いました。

 

■水彩画Pさんのオススメ楽曲

▼絵馬には林檎の願い事

 
▼不釣り合いな楽園はエレクトロに鳴く

 

■「Stay True」における田口さんのパフォーマンス

▼初披露は2020年11月4日のライブ「Chance」でした。

 
「新曲を歌う」「自身で作詞をした」という情報は事前に得ていたので、中盤で歌い出した時には何としてでも歌詞を聞き取ろうと画面に噛り付くようにして視聴していたのを今でも覚えています。
この時は音源もおそらくまだ収録していないし、バンドでの生演奏だったので(言葉を選ばずに言うと)まだ歌い方も少し安定していなかった印象でした。
それでも、「琥珀色の朝を迎えて」「劣等、孤独と小さな夢」「苦しくて吐き出したいよ」「翼無くした命」という彼のリリックはハッキリと正確に聞き取れました。これがリリースでどう世に出されるのか、そう思いながら数々のライブで聴きつつ、年月が流れていきます。
 
その初披露の時から約5ヵ月の時を経て、ようやく今年3月31日の今日にリリースを迎えました。
仕事の関係上、残念ながらMVのプレミア公開と記念生配信には立ち会えず…(休憩中に煙草を吸いながら悔しがる私)
長時間休憩に入った時、やっとの思いでMVを視聴することができました。
 
「この曲で踊るのは難しいよな」と曲を聴いた当初から感じていた私。実際、ライブで披露するときも「ダンスパフォーマンス」だったことはあまり記憶にありません。
しかしそこは流石田口淳之介、身体を使った表現を存分に取り入れた仕上がりとなっておりました。
今回彼が書いたリリックは良い意味で「彼らしくない」と思う部分が多々ありましたが、映像として見ると寧ろ「彼らしい」と思える作品だと全体を通して思えるものでした。
 
(以下、MVの印象的なシーン)
(0:17)「琥珀色の朝を迎えて」
 琥珀色の光。ここで冒頭の白い服の彼とは別の、黒い服の彼が映る。
(0:19)彼の周りを舞う黒い羽。
(0:25)「苦悩」を表現するような体の動きと、白い空を飛ぶカラス。
(2:53)「時計の針が戻らなくても」
 私達側から見て反時計回りのターン、直後に時計回りのターン
(3:26)地面に残された黒い羽。
(3:37)道端に落ちている何かに気付く。それは黒い羽。一枚だけ残ったそれをそっと拾い上げる。

 

■総括

始めて曲を聴いたあの日から今日まで、とても長かったような短かったような、何とも言えない期間でした。
普段は「魅せる」方にパワーを全振りしているような彼なので、敢えて「聴かせる」方に意識を持ってきたこの曲はきっと、今後の彼を大きく変えるような曲になるだろうと思えてなりません。
パフォーマー」としては私の中で常に一流ですが、「クリエイター」としての一歩を踏み出すきっかけとして心から期待しております。
 
▼こんな話をしているとふと思い出すこのツイート。

 
さて、そんな言葉がヘタクソな彼が一生懸命組み立てたこのリリック。
印象に残るフレーズはいくらでもあるんですが、歌詞全体の中で私が気になったのは歌詞の風景を描いているであろう「三つの色」でした。
多分、誰もが掘り下げていないであろう歌詞に出てくる「色」について語ってみたい!
個人的な見解ですが、ちょっと意識して聴いてみると曲を表す映像が自然と頭に流れてきて面白いです。
 
▼「琥珀の朝を迎えて」
歌い出しに早速出てくる色です。普段聞き慣れない色なので、おそらく彼なりに含んでいる意味や、浮かんでいる情景があると見た。
 
――琥珀とは、樹木から出る樹脂が地中で固まり化石になったものです。
琥珀のように植物由来の宝石は珍しく、硬度も鉱物に匹敵するため、洋の東西に関わらず宝飾品として珍重されてきました。
琥珀は英語でアンバー(Amber)といいます。
琥珀色はウイスキーやブランデーをを表現する色としても使われます。

冒頭に貼ったインタビューの記事からして、これは磨りガラス越しに差す夕日を表すものじゃないかな、と感じましたね。
 
――Aメロに〈磨りガラスから〉って表現があるんですけど、実際に当時過ごしていた場所は磨りガラスなんですよ。5月末とかだったんで、暑いときは窓を開けてくださいって言ったら開けてくださるし。ちょうど夕日の時間帯にすごくセンチメンタルになったりして(笑)。
夕日なのに「朝を迎えて」っていうと矛盾していますが…
うーん、これは夕日と語ってはいるけれど実は朝日の方を指しているのか、もしくは目覚めたのが夕日の時刻なのか。
 
――考えても答えが見つからないので本を夢中で読んでましたね。1日1冊しか借りれないので朝本棚から選んで1冊とって読み始めると午前中には読み終わっちゃうんですけど。
これを読んだ印象で言うと、個人的には後者のイメージかなぁ、と思います。午前中に活動が終わっちゃうとすると、午後はもう寝るぐらいしかやることなくない?それならその次に出てくる「白い夢」にもつながるような気もしますし。
普段起きて生き生きと活動しているはずの時間に眠り、琥珀色の夕日が差す時刻に目覚めるような生活を送って、自分の置かれている状況を改めて理解するような、そんな情景が感じ取れました。
 
そして、琥珀色っていうのはリンク先の色見本でも分かる通り、橙色の仲間なんですよね。
MVでも橙色の光が所々に現れています。
橙色=オレンジといえばかつての彼の色ですが、それは果たして単なる偶然なのか。
 
 
▼「声を上げて 叫んで 流した血は 皆んな同じ真紅なら」
一般的に「血の色」として表現される色。この歌詞でもそんな色として描かれていますね。
この色は彼がかつて「嫌いな色」として挙げていました。
 
――嫌いな色:赤(血の色)
KAT-TUN 1st写真集より)
――真紅(しんく)とは、深みのある真っ赤な紅色のことです。『韓紅からくれない』とは同色で、別に『深紅しんく』とも表記します。現在では「真紅の花びら」などのように「真っ赤」と同じ意味でも使われます。

もう15年以上も前の事なので今はどうだか分かりませんが、「自分の血を見て気絶しそうになった」みたいな話を割と最近してた気がするので、今も多分嫌いなんじゃなかろうか。

 
「血」って不思議ですよね。
常に自分の体内にあるものだし、周りにいる全員の身体に流れているものなのに、それが外に出ただけで怖がられ、嫌われる…。
誰もが内に秘めている負の感情が、表に出た時だけ嫌なものとして扱われる現象と何となく似ているような気がします。
この歌詞を取り入れた彼の心情は分かりませんが、「人に見せたくないし、自分でも見たくないもの」を表した言葉のように私は感じました。
 
 
▼「日々の 終わりの手前で 白い夢を視る」
ここについては、記事の中で明言していました。
 
――夢って夜に見ることが多いから暗い中じゃないですか、でもなんか自分の中でそれが全部白くぼやけるんですよ。だから〈白い夢を視る〉って表現になったりとか、やはりその場にいて経験しないと感じえないものってあるから、そういう部分はちょっと自分でしか紡ぎ出せない言葉なのかなっていうのは思いましたね。
最初に歌詞を聴いた時は「白昼夢」のことじゃないかと思ったこのフレーズ。
しかし、上記の言葉を聴いただけじゃそれが正解なのかどうかは分かりません。白昼夢と言うと昼間に見る夢なので、それを見た後の何とも言えない後味の悪さを表したものなのか、それとも普通に夜寝ているけど全てに靄がかかったようなスッキリしない夢のことなのか…
 
反して、現実世界で見る光景は非常に真っ黒なものだったそうです。
 
――新聞とかでも芸能欄ってあるじゃないですか、スポーツ新聞とかだったら。収監されている人の記事は全部真っ黒に塗られているんですよ。それで、新聞を見たらラテ欄が全部真っ黒だったんです。これもう全部僕だ!って。もう見事に真っ黒なんですよ。こんなに朝から晩までワイドショーってやるんだって思って。で、ペラってめくると芸能欄で、そこも片面全部真っ黒でした。
起きている間に見た真っ黒な世界を補うように現れたのが「白い夢」だったのかな。
どっちにしろ、「白」という色が持つ神聖なイメージとはかけ離れていそうな情景です。
 
――白(しろ)とは、日本の色名の中でも最古のものの一つで、光のすべてを反射する物の人間が知覚する表面に見える色のことです。
古代の日本人にとって、白は純真無垢で潔白を表し、神事に関係ある神聖な色として特別な存在でした。この伝統は現在に至るも変わっていません。

 
…で、結局何が言いたいのかと言うと、この曲には「自分の想いを滅多に書かない」彼にとっての、「孤独と不安の三原色」とも取れる映像が感じ取れたということです。
それぞれ単体の色として見ると綺麗なものなんですが、三色が混ざり合うことによって、とても鬱屈として汚く濁ったもののように見える。
けど、この曲を通して「我々は常に綺麗なものを観たいわけではない」という感覚を味わった気がするのは確かです。
キラキラ明るいオレンジ色じゃなくてもいい、燃え上がるような美しい赤色じゃなくてもいい、清廉潔白な白じゃなくてもいい。
そんな「美しくないもの」を彼が表現し、私たちが聴き手として受け入れるような、『転機』となる曲なんじゃないかと、率直に思いました。
 
そして、一番印象的であるサビに彼が込めた想いはこうです、
 

『俺が俺を離したくないなって』

(いつかのライブのMCより)

MVの終わりで掴んだ黒い羽は、彼が離したくなかった自分そのものなのかもしれませんね。