今日という日は残りの人生の最初の日

人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

わたしの思う非対称 ―『言わなければよかった。』を聴いた感想

お疲れ様です、アンです。

魔の5日連続夜勤が終わりました。いやぁ、長かった。
でも長々と文章を書くだけの体力は残しておきました。
 

■言わなければよかった。 feat.いぶすき

▼Lyrics&Music:いぶすき様

VOCALOID MV

IllustYo!シコ様
Bassふぁみ。様
Vocal初音ミク
 
田口淳之介 MV

Director比嘉悠人様
        田代大地様
Hair&Make原みさと様
StylistKEITA UCHIDA様
 

■田口さんによるレビュー・制作過程

・サビ前のベースがポイント。最近高校を卒業したベーシストのふぁみ。ちゃんがベースで参加。
・アンブレラと同じく、ラスサビの転調が印象的。
・田口さんが前回の「ジュウゴノシンゾウ」リリース時に、リリースライブを生バンドでやっていたので、バンドで再現されることを前提に曲を作った。
 仮にバンドで演奏するとして、奏者の方が演奏しやすいように意識した。
・キャッチーで分かりやすく、楽器でアレンジされることを想像した上での音作りをしている。
・他の方が今流行りのサウンドで作ってくると思ったので、ゴリゴリのバンド風にし過ぎて浮かないように、且つ生のバンドっぽい音も取り入れたかったので、そのバランスに相当気を遣った様子。
・いぶすきさんの曲制作において、「段階」が凄かったという田口さん。最初はめちゃくちゃシンプルで音数の少ないデモが来た。
 田口さん「俺ね、ぶっちゃけ不安だった。出来上がるのこれ?って 笑」
 いぶすきさん「めちゃくちゃ申し訳なかったです!」
 でも最後はバッチリ仕上げてきたところは流石。
・女性目線の曲を書きたかった。田口さんは男性目線での恋の歌を歌うことはあっても、女性目線の曲はなかった印象。だからこの機会に、自分が書いた女性目線の曲が通るのであれば通したいと思って歌詞を書いた。
・そんな歌詞の邪魔をしないように、極力楽器を減らす方向でいった。いつもの曲だったら楽器をどんどん入れちゃう。
 田口さん「俺も女性目線は初めてだから…」
 いぶすきさん「初めてですか!?じゃあ一生言って回りますねこれ!」
 田口さん「俺の処女をね、取っていったってことですよ」(こらこら 笑)
 いぶすきさん「ごめんなさい、絶対他のボカロPさんドン引きしてますよね 笑」
 コウさん「怖いわぁ 笑」
 
(余談)これを聞いた私、「いや、水差すようで悪いけど初めてじゃなくない?」って思ったんですよ。

(いぶすきさんの正体を知った上で言うと、「よりにもよってこの二人が気付いてないのヤバいだろ 笑」と思ってツイートしてしまった)
 後日、田口さんもその点についてお詫びと訂正を行っておりました。南無三。
 

■いぶすきさんのこと

・活動開始から僅か3ヵ月(2021年1月30日当時)の、新進気鋭ボカロP。
・新幹線が好きなことで知られている。別名新幹線P。
・代表作「Pondering」「JOKER」。
 (告知Twitter紹介文より抜粋)
ツイキャスにて「ボカロPは基本引き籠もっている」という話の流れからいぶすきさんの紹介に入る。
 田口さん「そんなコミュ障の中で全然コミュ障じゃない人が一人いるけど」言い方!
 彼の言う通り、一人だけ確実に明るい声で自己紹介するいぶすきさん。(今回、声だけで聞き分けできない方が多い中、確かにいぶすきさんの声だけははっきり分かる)
 (リリース記念ツイキャスより)
 

■いぶすきさんのオススメ楽曲

▼JOKER

 

田口淳之介ver.MVについて

・監督は比嘉悠人さんと田代大地さん。アルバム内のMVで協力いただいたディレクターさんはクラブハウスで出会った方が殆どとのこと。
・撮影場所はちょっとオシャレな感じのトイレの前。「ミラーボックス」という歌詞が出てくるのでディレクターさんがその場所を選んだ。
(最初はこの歌詞とトイレと言う場所が結びつかなかったんですが、ミラーボックスって洗面台のことなんですね)
・奇跡的にめちゃくちゃ人がいなかったので撮影はとてもやりやすかった。
・外での撮影は雨が降るか降らないかギリギリのところだった。
・「言わなければよかった。」のMV撮影は、全8曲の中で一番最後に行った。一番最初に撮った「DUMMY」の頃と髪の長さが若干違う。
(全MVに対して思ったことですが、限られた毛量と長さで様々なヘアセットができるヘアメイクさん凄いと思います)
・最初から最後まで田口さんに笑顔はなく、切ない表情を浮かべている。
(女性目線の曲も、彼氏目線の映像になると「言わなければよかった」ことがあるのは彼の方も同じかもしれないなんて思えてきます)
 

■総括

試聴の際、真っ先に気に入ったのはこの曲でした。曲のキーもテンポも田口さんの声の特徴にすごく合ったもので、「ああ、田口さんの声と歌い方の癖を間近で聴いたことある人が作ったんじゃなかろうか」って思うような…(皆までは言わない)
 
初めて聴いた時から「女性目線の曲だ!」ってすぐに分かったのは、お洒落なメロディラインと田口さんの「他とは少し違う歌い方」からです。(個人的に椎名林檎さん味を感じる曲調)
「田口さん初の女性目線曲」という夢は前述の通り打ち砕かれたわけですが、水彩画Pさんとはまた違ったいぶすきさん独自の女性像がそこにはありました。
 
この曲の一番面白いと思う部分は、インパクトの強い曲名でもある「言わなければよかった」という後悔の念を延々と吐露しつつも、肝心の「何を」言わなければよかったのか?が最後まで分からないところです。
それはきっと、大半が女性であろう田口さんのファンの「言わなければよかった」と思った恋愛経験を、各々の思い出と照らし合わせて聴いて貰いたいための曖昧表現なのかな、と思います。
 
…まあ、「言わなければよかった」という経験はおろか、恋愛経験の分母自体がほぼほぼ無い私は共感が難しいんですけど。(悲しい)
でも、恋愛をしてこなかったが故の想像力というか、田口さんのMVと歌詞の内容から、どんなストーリーが展開されていたのかの推測はできます。
聴き手によって思い描くものは全く違うという前提で、飽くまでもとある男女の一例としてここに書かせて頂ければと思います。
 
まず、Aメロの歌詞で印象深いのは「非対称になった」という表現。
 
『一つだけ剥がれたネイル』
『開けたばかりのピアスホール』
『非対称になったここで』

 ネイルやピアスといった女性特有のアイテム(男性もするけど)で、非対称をお洒落に表現してます。

この「非対称になった」という言葉をどう捉えるかと聞かれると、率直には「気持ちがぴったり重なり合わなくなった」みたいな意味かなぁ、って感じますよね。
別れの曲であることは間違いないので、そりゃ気持ちが重なり合わなくなったのは当然なんですけど。
しかしながら、田口さんのMVを見てると「愛し合っていた二人のすれ違い」とはまた違う解釈もできます。
 
田口さんのMVで目に残る映像といえば、ガラス戸に添えられた二人の手と、トイレの入り口の扉。
どちらも丁度中心から二分割されたそれらは、一見対称なようで実は非対称です。
その非対称と言える最たる部分は、どちらも「男と女」の違いが強調されているということ。
男性のゴツゴツした手と、女性の綺麗にネイルされた手。トイレの扉の男女のマークの違いもそうです。
 
非対称に「なった」ってことは、元々は対称だったって意味なわけで。
「男と女」が非対称な関係だという解釈でいくと、対称だった頃は「男と女」ではなかった…?
うーん、ちょっと苦しいけど性別を感じさせないような幼馴染とか、友人関係とかかなぁ。
 
もし彼女の「言わなければよかった」一言が原因で「男と女」になってしまったのだとしたら、そのシチュエーションとしてはただ一つ、彼女が言ってしまったのは「愛の告白」だったんではないでしょうか。
(つまり、元々恋人だった二人が別れたんじゃなく、そもそも最初から恋人じゃなかったっていう発想)
 
『切り出したわたしのせいなの』
『切り出させたのはあなただから』

 ここ、「余計なことを言ったわたしが悪いけど、言わせたあなただって悪いのよ」っていう女性特有の身勝手な心情が出てて好きなんですよねぇー!(と、Twitterでも私は主張した)

どんなシチュエーションにも当て嵌められる心情ですが、私が唱えた説に当て嵌めるとしたら、「告白したわたしのせいだけど、それほど好きにさせたあなただって悪いのよ」って意味だと捉えられなくもない。
気持ちを伝えなきゃ今まで通りの仲でいられたのに、伝えたが故に関係がギクシャクしてしまうっていうのはドラマや漫画でもよくありますね。
男性側が「ごめん、そういう風には君を見られない」みたいに答えたんだったら、そりゃ「言わなければよかった」って思うのも無理はない。
 
『奢らないでね馬鹿』
最後に、歌詞の気になった&気に入ったフレーズをもう一つ。
この部分は田口さんの歌い方が好きってのもさることながら、漢字表記がこっちだとは思いませんでした。
耳だけで聴いた時はてっきり「驕らないでね」の方かと…
けど、よくよく考えたら状況的にも心情的にもこっちが正解でしたね。
要は「彼氏みたいなことしないでよ馬鹿」ってことだ。
 
さて、今回は水彩画Pさんに続く二作目の女性視点の曲ですが、二人の思い描く女性像が割と対照的なところも面白いです。
最後まで想いが言えずに成就しなかった彼女と、言ってしまったが故に玉砕したであろう彼女。
遊郭の女性の奥ゆかしさもいいけど、現代の女性の少し強気な感じも魅力的でいいなあ。(もしかしてそれぞれ二人の好みのタイプなのかしら)
 
彼の歌う女性視点の曲に無限の可能性を感じた、そんな楽曲でした。