今日という日は残りの人生の最初の日

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俯瞰と主観を遮る傘 ―『アンブレラ』を聴いた感想

こんにちは、アンです。

ここ最近雨ばっかりでしたが、昨夜から降らなくなりました。
なんだよー折角この曲について書こうって日になって。 笑
 

■アンブレラ feat.水野あつ

▼Lyrics&Music:水野あつ様

VOCALOID MV

Illust熊谷のの様
Guitarへくぼき様
Vocal:可不
 
田口淳之介 MV

DirectorTOGUCHI様
Hair&Make:NOBU様(HAPP's) , 森雅弘様
StylistKEITA UCHIDA様
CostumeSUPERTHANKS様
      blank様
 

■田口さんによるレビュー・制作過程

・「傘」がテーマの失恋ソングで、相手を今でも想い続けているような感情の曲になっている。
・ラストの転調部分がお気に入り。
・水野さんと田口さんは曲を書く以前から何度か交流がある。(バースデーファンミにいらしてました)
・田口さんの人間的な部分とタレント的な部分、両方を知った上で水野さん自身が「どんな田口さんを見たいか」と考えて曲を作った。
・普段田口さんが個人で出している作品はエレクトロチックなものが多いので、「僕を選んで頂けた理由は何だろう」と考えはしたものの、最終的には可愛くて軽快な自分らしさを出すべきという結論に至った。
・でも田口さんの叙情的な、パッションのようなものも伝えたいと思い、歌詞にはその要素を落とし込んだ。
・自分の作る曲調は田口さんのスタイルとは真逆だと思って「僕なんかができるのかな」と結構心配した。
 田口さん「そうだよね。でもなんかね、あつくんの優しい感じが良いなって」
・音源が田口さんから来た時、曲の雰囲気が歌声ですごくよく表現されていると思った。
・アルバム内には自分と真逆の雰囲気の曲もある。表現の違いを楽しんで欲しい、と水野さん。
 田口さん「特にど~ぱみんくんの『猛毒』とかね 笑』
 

■水野あつさんのこと

・「優しい音楽」をテーマに、聴いた人が応援したくなるような、優しい気持ちになれるような音楽を作っているシンガーソングライター。令和発の現在話題沸騰中のアーティスト。
 (告知Twitter紹介文より抜粋)
・「知りたい」等の楽曲で有名な、新進気鋭なボカロPさん。自身の曲のセルフカバーもよくされている。
 (リリース記念ツイキャスより)
 

■水野あつさんのオススメ楽曲

▼生きる

 

田口淳之介ver.MVについて

・公開は7/24ですが、田口さんの月イチライブの直後だったのでカウントダウン配信ができず、あまり本人からの情報が残っておりません。悲しい。
(本人はやるつもりだったものの、電波不良で配信ができなかったんです。しかし、何度か配信を試みて「次ダメだったらYoutubeのチャットd…」と言いかけた瞬間にツイキャスがブチっと切れたの面白過ぎた)
・監督は同アルバムの「DEEPEST」の制作も務めたTOGUCHIさん。
・失恋ソングの歌詞に合わせて、二人が仲良しだった頃の映像がストップモーションとして入っている。そんな思い出を自宅のソファや車の中、雨の降る外で傘をさしながら嘆くような彼のシーンが交互に流れる構成になっている。
(決して広そうとは言えない部屋とかスーパーで一緒に買い出ししている映像の、いい意味での庶民感が共感を引き寄せますよねぇ)
・ファンクラブ会員は、会員限定のマイページにてこのMVのオフショットとムービーが閲覧可能。
 

■総括

水野あつさんとはプロジェクト前からご縁があり、去年11月のファンミーティングにも来てくださってましたね。
だから「ボカロPとのコラボ第二弾には彼がいるに違いない!」と思っていたら、期待通りにメンバー入りしていた時の喜びを今でも覚えています。
 
田口さんと関りがあった方は即フォローする派なので、水野さんの作る楽曲には結構予備知識がありました。
初めて試聴でサビ部分を聴いた時から、彼の作る曲特有の優しくて可愛いメロディに心惹かれたファンは多いんじゃないでしょうか。
なんか、「この方が人気あるの分かるなぁ」って素直に思えました。
 
さて、「アンブレラ」といえば浮かぶのは当然雨の情景で、田口さんを昔から好きな人には思い出深い「Raindrops」のカエルさん視点で妄想してみたり、「別れの曲」繋がりで同じアルバムの「言わなければよかった。」とセットで聴いて別れた男女を完成させたり、好き勝手に解釈しておりましたがまあ普通に考えたら作曲者違うんだしそんなわけないよね。(ここまで一息)
(でも、ライブで同じセトリに組んでそういう演出を作るのはアリだと思うよ!)
 
すみません、ちゃんと「水野あつ」さんの曲として聴きます。
 
この曲は「愛する人との別れ」「雨の情景」というテーマがありながら、AメロとBメロにはあまり暗さだとかシリアスな雰囲気みたいなものはなく、パラパラと雨が降る街を軽い足取りで歩いているような軽快さを感じます。
そんな軽快なメロディーから、サビに入ると少し力強さが出てきて、必然的に聴き手の耳に歌詞が強く入って来るような盛り上がりを見せますね。
(この曲はアルバムの中でも比較的尺が短い所為なのか、同じフレーズを使ってる部分なんかは特に耳に残りやすい)
 
『幸せの定義とか 君と僕の運命とか そんな事 誰にも分かるはずないって思ってる』
『僕らなら信じ合えると思ったんだ』

 どちらも「思う」という動詞を使っている辺り、特にこの曲の強い思いを表現する部分であることは間違いない気がします。

しかしながら、どちらも嘘ではないんでしょうけど、一人の人間に宿るにはかなり対照的な思いというか、随分視点の異なる思いだなぁと感じました。
 
「幸せの定義」「運命」といった壮大なワードを使って、「誰にも分かるはずない」で結ぶ前者は、とても「俯瞰」した思いという印象。
 
――俯瞰とは、高い所から物事を見下ろすこと、あるいは、広い視野で全体を把握することである。読み方は「ふかん」である。俯瞰の語には、物理的な意味と比喩的な意味の2つの意味を含んでいる。

 

一方、「僕ら」という自分を含めた人間を主語とした後者は非常に「主観的」です。

――主観的とは、表象・判断が、個々の人間や、人間間の心理的性質に依存しているさま。自分ひとりのものの見方・感じ方によっているさま。

 

「僕らなら信じ合えると思った」という強い思いはありながらも、別れた後に「それは自分一人だけの思いだったんじゃないか」と考え始めて、だんだんと「僕らが一緒にいて幸せになれたとは限らない」みたいな俯瞰した視点で物事を見始める。

心情的に、離れた直後というよりはしばらくして落ち着いた後なのかも。
 
ここでいう「俯瞰」というものを高い所からの視点=空から降る雨に例えているのだすると、そんな俯瞰から自分一人の思いである「主観」を守る存在こそが、曲のタイトルでもある「傘」なのかなぁって思いました。
自分一人だけの思いって考えると寂しいですが、傘というのは基本的に一人で入るものですもんね。
 
『君の髪の匂いすら その声や顔も忘れるかな』
『思い出が全部白紙になって』

 「僕らなら信じ合える」ってあの時思っていたことも、いつかはきっと忘れてしまうことを彼は分かっています。

だからこそ、今はまだ俯瞰した思いに濡れないように傘をさす。
「周りばっか見て流されて、胡麻化していた自分」がかつて確かに信じていた思いを守ることが、彼女へのせめてもの償いだったりするのでしょうか。
田口さんのMVでも、二人が仲良しだった頃の映像がBメロとサビでずっと出てきますよね。
 
『もし僕が消えたら 別々の道をさ 選んだとしても』
『君自身の事をさ 責めないで欲しいな』
『雨を待つように』

 ここ、「雨に濡れないで」って意味じゃなく、本当は「あなたにやさしい雨が降りますように」って意味だったりするのかな。

前述の解釈に当て嵌めるとしたら、「僕はまだ忘れたくないけど、君は僕を忘れても良いんだよ」みたいな。
雨って、冷たくて苦しいものにも、優しい自然の恵みにも例えられるので不思議です。
 
作り手と歌い手両方の優しさがしっとり染み込んだような楽曲でした。