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人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

溺れた王子の救い方 ―『ニライカナイ』を聴いた感想

楽曲レビューもいよいよ大詰めです。カタカナ6文字のラスト3曲に入ると何だかクライマックス感がありますね。

途中キーボードが故障したりして今月中に終わらせる目標は達成できませんでしたが、最後までやり遂げたいと思います。
いつもいいねしてくださる方々ありがとうございます。本日もお付き合いくださいませ。
 

ニライカナイ feat.しぇろ二期

▼Lyric&Music&Movie:しぇろ二期様

Arrange毛布様
Illustのをか様 
Vocal(ボカロ版):音街ウナ
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼アルバムに参加した感想は?ボカロPアンケート!

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.12 -ニライカナイ-

 

■田口さんによるレビュー

・「ニライカナイ」は沖縄の言い伝えで、「異世界の楽園」のような意味。最初はハワイとかそっちの方面の言葉を想像したが、意外にも日本由来の言葉だった。
・海中で宴が行われているようなシーンを想像させる。この表現の仕方に、しぇろ二期さんのファンタジックな表現力の豊かさを思わせる。
・曲自体はノリノリでギターサウンドもカッコよく、自然に跳ねてしまうようなメロディー。田口さんもお気に入りの楽曲で、アルバム内でも一、二を争うぐらい好きな曲。ライブで歌うのが楽しみ。
・ボカロVer.と田口さん歌唱Ver.でアレンジが大きく異なる。田口さん歌唱Ver.はギターが全面に押し出されているが、音街ウナが歌うボカロVer.はポップな印象の強い仕上がりとなっている。
・最初のデモを頂いた時はボカロVer.の曲調で頂いていて、レコーディングの直前にアレンジVer.が上がってきた。アレンジは毛布様。
ニライカナイのタグラブの収録日は偶然にもプライベートで海に行っていた。タグラブではその日の話を中心に語る。
 

■制作過程

・「転生・復活・再起・再生」をテーマに曲の制作を行ったしぇろ二期さん。
・かなり好き勝手に曲を書かせてもらって、楽しくやらせてもらった。人充てに曲を書き下ろしたのは初めてだったので新鮮で楽しかった。
・「バカをやるなら」「まっさかさまー」等、ポップな楽曲が印象的なボカロPさんだと公募の時から思ったので、そんな曲調をオーダーした。
 

■しぇろ二期さんのこと

・田口さんの楽曲提供を機に「しぇろ二期」に改名。
・ガヤ企画を実施中。
・他の楽曲で気になった曲は左手さんの「DIDA DIDA DIDA」。
 

■しぇろ二期さんのオススメ楽曲

▼バカをやるなら

 
▼まっさかさまー

 

■「ニライカナイ」における田口さんのパフォーマンス

・何といってもいつの間にか生まれていたギフト芸。「この曲が鳴ったらお魚ギフトを降らせる」というオタ芸が定着し、お魚シャワーが画面いっぱいになる曲になりました。今年はコロナ渦につき生でライブを見られる機会はほぼ無かったのですが、歓声の代わりにコメントで盛り上げるスタイルにファン一同慣れてしまい、お魚のギフトを大量に降らせることで彼へのエールを送るようになりました。ライブの「投げ銭」の大半はこの曲が占めているといっても過言ではない。
・以前、彼が「彗星ハネムーン」の魅力を語る際に「コメントの一体感」を挙げていたので、そこに一番近い演出ができているのがこの楽曲だなぁ、とライブの度に思います。セトリでいうと後半の畳みかけの盛り上がる部分で歌うことが多いかな。
・パフォーマンスとはちょっと違うけどこの曲をバックにしている時の彼は高確率で寿司の話をする。(週一回のニコ生トークの時)
 

■総括

この企画を通して初めて知ったボカロPさんですが、非常に楽曲制作スキルの高い方として印象的でした。
あれからTwitterもフォローしてますが昼夜逆転しがちな私と割と生活時間帯が近いので(特に早朝)いつも勝手に彼のツイートを楽しく拝見しております。先日はお誕生日おめでとうございました。
 
今回、制作過程のお話は対談もなくあまり詳しくは聞けなかったのですが、アルバムの中でもインパクトが強く初見さんの耳にも残りやすいファンタジックな仕上がりになっていた一曲でした。
田口さんにこんなに魚の名前を連呼させたのは間違いなくこの方だけだと思われます。(ご本人様のツイートより)
リアルな人間の感情をリリックに込めた楽曲が多い中、路地裏探訪と並ぶ「人ではない何か」が語り手となっているような、異世界感がある独特な雰囲気がありますね。
 
ニライカナイ」という言葉を聞くのは、私自身この楽曲を通して初めてとなります。
田口さんもタグラブでこの言葉について少しだけ解説をくださいましたが、改めてこの言葉の由来とか詳細を調べてみました。
 
 
沖縄は周囲を海に囲まれています。そのため自然の恩恵は基本的には海から授かります。
本州など陸続きの地域であれば、恩恵を授かるのは山かもしれません。しかし沖縄の場合は海なのです。海からは魚や貝など貴重な食材が得られます。
これらをただの食材として捉えるのではなく、遥か彼方にある神々の住む場所からの贈り物だと考えたのです。
その神々の住む島のことをニライカナイと呼びます。ニライカナイは暮らしの恵みをもたらしてくれる場所を指す言葉なのです。そして実際に沖縄にはニライカナイの神にまつわるお祭りがいくつもあります。
ニライカナイの概念は沖縄の文化を考える上では欠かせないものの一つなのです。
 
ニライカナイからもたらされる恵は食物や作物だけではありません。実は魂にも関係しています。これから生まれてくる子供の魂、それもニライカナイからやってくるという考えもあるからです。
そしてそのその魂が宿った人間が死亡した時に帰る場所もニライカナイだとされています。死者の魂は、天に昇っていくのではなくニライカナイに帰っていくという考えが残されているのです。
 
琉球王国時代及び、沖縄の一部地域では死者の魂について、東京や大阪など世間一般の魂とは異なる考え方があります。
現代日本の一般常識は西洋の唯物主義そのものです。神道八百万の神々をオカルトとして否定するのが一般的です。魂の存在を全く無視した教育や経済発展が行われています。
しかし琉球王国時代の考え方は唯物主義ではありません。肉体が滅んでも魂が残ることは現代とは真逆の常識だったのです。実際に琉球王国では死者の魂はニライカナイに一度は去る、とされていながらもその存在がそれで終わるものではありませんでした。
7代後になれば守護神になるという考え方が存在していたのです。これはつまりどういうことかといえば、ニライカナイは魂が生まれ変わる場所だということです。ただの死者の魂が守護神へと生まれ変わる。ニライカナイはそういった神聖な場所でもあるのです。

 
そ、そんな奥の深い言葉なのか…
情報量の多い文章の中から上記を抜粋していますが、要はニライカナイとは神々の住む場所であり、死者の魂が帰還して生まれ変わるという神聖な場所を指しているようです。
「すべての生命は海から」「死んだら海へ還して」と他の小説や楽曲で聴いたことがあるような気もしますが、「転生・復活・再起・再生」というこの曲のテーマが綺麗にリンクしていますね。
次の人生へ踏み出せばそれで良いよ」「来世の貴方を僕に見せてくれよ」という歌詞は言わずもがな、「もう一度」という歌詞に合わせて「再生」の文字が表示される演出がなんとも憎いです。
この時に活動再開した彼へのエールに聞こえなくもないところが、ファンタジックな曲調ながらもリアルなメッセージ性を感じます。
 
ライブでこの曲が流れるといつも魚のコメントやギフトが大量に流れ、そこに「人魚」の姿も現れます。
皆が良く知る物語の「人魚姫」は溺れた王子を陸に引き上げますが、この曲の人魚は海に沈んだ彼を敢えて「溺れて良いよ」と楽園へ引き込み、労うように魚たちと踊った後で、来世でまた出会えるように約束を交わしているような情景が浮かびます。
「二人は来世で再び出会い結ばれる」というのが、もしかするとあの物語のトゥルーエンドかもしれないな…と飛躍した想像ができるような、ストーリー性の高い楽曲でした。