今日という日は残りの人生の最初の日

人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

シャッターを切る瞬間 ―『フライアウト』を聴いた感想

しばらく振りです…

9月は割とのんびり過ごしましたが10月から年末にかけては濃い期間になりそうですね。
忙しくならないうちに書きます。
 

■フライアウト feat.ノイ

▼Lyric&Music:ノイ様

Illustなむさん様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(R Sound Design × ノイ × 田口淳之介

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.13 -フライアウト-

 

■田口さんによるレビュー

・公募で150名以上の中から選ぶのはプレッシャーが凄かったがやっぱり聴いてて楽しかった。
・ボカロ曲のデモを聴いていても、「自分が歌ったらどうなるか」という部分はとても意識していた。
・ノイさんを選んだきっかけはギターサウンドの勢いとカッコよさ。一番好きになった曲は「インダイレクトメッセージ」。テンポが速くてノリの良いメロディーと歌詞のインパクトに「勢いを感じる曲だな」と感じ、お願いしたいと思った。
・デモを頂いた時点で「ジュウゴノシンゾウ」の推し曲になると感じた。
BPMのテンポが速いし(BPM182)キーも高いので歌うのが凄く難しかった。
・タイトルの「フライアウト」に込めたノイさんの思いは「窮屈な観念から飛び出す」「不満足な現実から抜け出せ」。田口さん自身にもグッとくるタイトルになった。
・世の中自分の思い通りにならないこともたくさんあり、強者が迫ってくる中で「自分が行く未来」を愛して前に進んで行くイメージを歌詞の中に強く感じた田口さん。サビが一番爆発的にパワーを感じる曲。
 ノイさん「とにかく田口さんを強くイメージして作りました」
・自分の声とロック調の曲は意外に合うかもしれない、という新たな発見を感じた。
 

■制作過程

・ノイさんは公募での参加。
・田口さんとノイさんは制作において直接お会いした。遠いところはるばる車で来てくださったノイさん。
 ノイさん「こんな顔ちっちゃい人いる!スタイル凄いな!って…」
 ノイさん「脚ほんとに7メートルありました」
・活動開始して1年弱、何か新しいことに挑戦したいと思っていたタイミングで丁度田口さんのプロジェクトに出会った。
・応募したタイミングではどんな曲を作るかは明確に考えていなかった。でも、公募で選ばれて田口さんと直接お会いした時、ボカロへの熱意やプロジェクトへの思いを聞かせてもらってから、「フライアウト」のイメージが浮かんだ。
・不安な気持ちを抱えながら生きている方へ、前向きな気持ちを届けたいという思いを込めたリリック。
・Cメロの早口な部分が聴きどころ。その難しいパートを田口さんがカッコよく熱く歌ってくれて、良い仕上がりになったと思う。
・キーを調整する時、自分の声の限界に挑戦したくて敢えて少し高めのキーを設定した。
・アルバムの曲順やライブのセトリにはストーリー性を意識しており、「フライアウト」は一番の盛り上がりの部分に持って行きたかったのでラストの一曲前の位置に置いた。
・MV絵師のなむさんにはDMで直撃。でもノイさんと一緒にイメージを投げかけたりしたらすぐにイメージ通りのラフが来た。
 ノイ「すごく綺麗な絵を素早く仕上げてくださって嬉しかったですね!」
・ボカロ版を聴いて、実はバーチャルな世界に生きる彼女たちも「人として生きてみたい」と思ったりするのかなって勝手に想像した。
 

■ノイさんのこと

・去年に初投稿、ボカロPデビューしてから1年弱。エレキギターの音をメインにしたロック調の曲を作っている。ボカロ界隈に入って間もなく、あまり知り合いもいないのでこれから仲良くしてくださる方がいらっしゃると嬉しい。
・対談はR Sound Designさんとご一緒。ボカロ界の第一線で活躍されている方と対談したいというご本人様からのご希望。
・かつてはバンドで音楽活動をしていた。バンドの場合はメンバーとの個性のぶつかり合いで生まれる楽曲が多いので、ボカロPとして個人で制作するとやっぱり違う。
・制作の時は作詞にとても気を付けている。曲を聴いてくださった方に不快になって欲しくない為、批判的なことはリリックに書かないようにしている。
・人と話すのが苦手なので、そんな自分が書いた言葉を好きになってくれる方がいるのが嬉しい。日本語の意味を正しく理解するために辞書を引きながら作詞している。
・映像へのこだわりはあるが、やっぱり曲に時間をかけたいので信頼できる方に細かくイメージを伝えて任せている部分が多い。
・ステージで人が歌っている様子を想像して曲の展開を考えたりもしている。
・ボカロは自分の音楽制作において欠かせない大切な相棒。生身の人間が歌っている曲を作ってみたいという思いはあるが、それでもボカロが歌う曲の投稿は常に並行したい。
・ノイさんは喋っていてもとても落ち着いていて、穏やかで可愛い。
 田口「ノイさんの声可愛いね」
 田口「可愛いよ、可愛いよ〜」(好き過ぎやろw)
 でもこんな力強い楽曲を書くというギャップがとても好きになった。
・ボカロ文化の中で羽ばたきたいという田口さんの思いを真っ直ぐな澄んだ目で真剣に聴いてくれた。
・初対面では緊張して上手く喋れなかったので、また改めてお会いしたい旨を田口さんに伝えたノイさん。その後Twitterで「一人でカラオケ行きます」みたいなツイートをしてたので思わず「一緒に行こうよ」とリプした。すごく癒される存在だけど、ギターやベースのパワーのある楽曲を作るノイさんには期待しかない。
 ノイさん「また一緒にやりたいです!」
・他の楽曲で気になった曲はジグさんの「ペタルダンス」。
 ノイさん「まずアルバムを前曲通して聴いた時、曲順が凄く良いなと思いました。自分の曲が13曲目に来て、その後を綺麗に締めくくっていて素晴らしいなと」
 (曲順に凄くこだわっていた田口さんからするとこの感想はすごく嬉しかったと思う)
 ノイさん「あとラスト3曲がカタカナ6文字って凄く面白いなってw」
・ライバルの方へのメッセージとして、総括するとリスナーの方の声に励みを貰いながら自分らしく頑張って頂きたいと言う旨を一生懸命語られていました。
 ノイさん「あ、まとまらないw」
・アルバム「余白」をリリース中(欲しい…)
 

■ノイさんのオススメ楽曲

▼インダイレクトメッセージ

 
▼ソーシャルディスコード

 

■「フライアウト」における田口さんのパフォーマンス

・ご本人も「推し曲」と仰っていた通り、様々なステージで歌われた楽曲でした。
・ダイヤモンドフェスという、ある意味勝負の場と言える舞台で歌われる一曲としても選ばれました。あれは素晴らしいフェスでしたがラストで「FLYOUT」のテキストが大きく出た演出に妙に感動しました。(曲名に対するリスペクトを感じた)
・Live in JT HomeのVol.9では一発目の曲として、Vol.10ではラストの曲として歌ってましたね。一番最初と一番最後の曲はライブのセトリでも重要な部分なので、そこから曲への愛が伝わってきます。
・田口さんの歌声は力強い歌詞や曲調でもどこかご本人の優しさを隠し切れないような印象があって、この曲からはそれを強く感じます。
 

■総括

対談やタグラブの様子から、田口さんがノイさんを大好きなことは凄く伝わってきます。
ボカロPさんとしてはまだ新人さんに該当する方みたいですが、Twitterをフォローしているとジュウゴノシンゾウでご一緒したシシドさんやRさんと会話しているところを時々お見掛けして、微笑ましい気分になります。
田口さんが繋いだ縁だと思うと少し誇らしいですね。
 
音楽素人なのでサウンドの部分についてはあまり詳しく語れないのですが、歌詞については本当に皆様個性豊かな方が集まったなーと思います。
ノイさんのリリックに強く感じたのは、「日本語って難しいー!」という印象です。
先天性」とか「相対的」とか「暫定」とか「不完全体」とか、「何となくのイメージは分かるんだけどちゃんとした言葉で説明しろと言われると自信がない」という単語があちこちに散りばめられています。辞書を引きながらリリックを書くと言われていたのがとてもよく分かりますね…。
けど、この楽曲に関しては正しい単語の意味を知ることより、言葉のニュアンスから全体のイメージを感じ取ることこそが一番面白い聴き方なのではないかとMVを観ていて強く感じました。
MVイラストは高いビルの屋上から飛び立っているような少女で、よく見ると手錠を着けていてその鎖を自ら断ち切っているような絵となっています。周囲にはその少女と群れるように鳥が飛び交っていますね。
そして曲名は「フライアウト」。この曲の歌詞にその単語は出てきませんが、書き手の思いが一番籠もっているのはメロディーや歌詞より寧ろ曲名ではないか?と色々な方の楽曲を聴いてて思うんですよ。
興味本位でジュウゴノシンゾウの曲名と歌詞の関連性を調べてみました。
 
▼歌詞の一部が曲名に組み込まれている曲
「What Color」・「FEEL THE LIGHT」・「祈るほど後悔」・「DIDA DIDA DIDA」・「サタデーナイトクルージング」・「路地裏探訪」・「閉花予想」・「stay with me」・「ニライカナイ」の計10曲
 
▼歌詞に曲名が入っていない曲
「Miss you」・「慣性スケーター」・「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」・「フライアウト」・「ペタルダンス」の計5曲
 

 

んー、こうやって並べると少なからず曲名と歌詞というのはリンクしているものなんですね。
「Miss you」と「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」はそのまま歌詞に出てくることはないものの、限りなく近いことは言ってるので歌詞と曲名の明確な言葉の使い分けを感じたのは残り3曲かなあ。
「フライアウト」については制作過程を聞く限りは曲が出来上がった最後に仕上げでつけたものに思えたので、このカタカナ6文字に作曲者であるノイさんの世界観が込められていると感じます。
 
突然曲と全然関係ない話なんですが、最近ようやくFC会報が公開されましたね。
その中のDIAMOND Fesのページは飛鳥さんがカメラマンを担当されていました。FCの会員の方ならあの写真の素晴らしさは確認されたと思います。
 
生の田口さんを一度見てしまうと、その後どんなに鮮明で滑らかな画像や映像を見ても、「ピクセル数とコマ数が足りねえなあ?」と思ってしまうのは周知の事実です(だと勝手に思っている)
でも、あの飛鳥さんの撮った数枚の写真には「彼の最も限りなく正解に近い一瞬を抜いている」という感動があり、同時に飛鳥さんのカメラマンとしての才能を感じずにはいられませんでした。
田口さんはポーズ指定して撮ってもらう所謂グラビア写真より、ライブや撮影の中のほんの一瞬を切り取ったような動きのある写真の方が映える人だと思っているので、故にシャッターチャンスが非常に少なく、撮る方はとても苦労するだろうな…と思います。
Twitterを見てると飛鳥さんのお写真は美しい鳥の姿を捉えたものが多い為、自由に動き回るものを撮るのが得意な方なのかなーって勝手に印象付けてます。そんな方のお名前が「飛鳥さん」って凄く素敵ですね。
 
あー…どうして急にこんな話をし出したのかと言うと、結局のところ「鳥」は籠に入って大人しくしている姿より、飛び立った瞬間こそが一番美しい生き物だと思うということと、田口さんはそんな鳥の姿に通づる部分があるということです。
「フライアウト」という曲名に感じるのもそんな鳥の羽ばたきの音ですね。
 
本来、鳥というのは上空に生息する生き物。
だから翼を広げて飛ぶ姿こそが一番美しいのだ、ということに、籠から鳥が逃げ出した今頃になって気づいた飼い主の愚かさを痛感したような、勢いのある楽曲でした。