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アンドロイドの涙 ―『ペタルダンス』を聴いた感想

最後の曲になりました。

田口さん自身にとっても、ファンにとっても思い入れのある曲なので、
締めくくりとして大切に書かせていただきます。
 

■ペタルダンス feat.ジグ

▼Lyric&Music:ジグ様

Illust大城慎也様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼アルバムに参加した感想は?ボカロPアンケート!

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.14 -ペタルダンス-  

 

■田口さんによるレビュー

・ラストに相応しい、このアルバムを締め括る一曲。
 デモを聴いた時点でこの曲は最後の締めくくりの曲として持ってきたいと思った。
・タイトルの「ペタル」は「花びら」、「ダンス」は「踊る」という意味がある。
・人への羨望や嫉妬など、雑念が入った感情に苛まれたときに聴いて欲しい。
・イラストの:大城慎也様がTwitterでイラストを公開した時のコメントは、「花弁が美しく散るのは、美しく咲いたから」。 田口さんもここには大きく共感した部分があり、自分も芸能活動はいつまで続けられるか分からないが、最後は綺麗に散っていきたい。
・「貴方の正解は貴方だけのものだ 大切にして 痛いけど」はジグさんのお気に入りのフレーズ。この楽曲において貴方だけの正解を見つけてほしい。
 

■制作過程

・ジグさんはオファーによる参加。
・田口さんからジグさん宛に直撃で連絡したところ、プロジェクトへの参加を快く承諾してくれた。
・自分が思っていること、言いたいことを詳らかにしてくてこの曲を作った。自分の中に少なからずはあろう部分、他人に寄り添えそうな部分を切り取って作った曲なので、「これは自分のことを歌った曲だ」なんて思ってもらえたら幸せです、とジグさん。
・最初は「シンデレラ」のようなノリの良い楽曲をお願いしたいな、と思っていたが、「僕はこういう曲を出した方が良い方向に行くと思う」というジグさんの想いを受け取って、「ペタルダンス」が出来上がった。
 ジグさん「オーダー通りに作ることもできたのですが、どうしてもやりたいことがあり、そのやりたいことが最良の結果になると信じていました」
・最初にリリック丸ごと完成したデモを一番早く頂いた。それを聴いてみた時、「俺自身へのメッセージかな」と感じたが、飽くまでそこに込められているのは「ジグさんの思い」。自分は歌い手として、ジグさんの思いを声に乗せてしっかりと届ける使命があると思った。
・「未来は変えられるけど過去は変えられるから」というフレーズについて。
 ジグさん「僕がひねくれているからか、よくある『未来は変えられる』というフレーズにピンときたことがありません。誰も未来のことは分からないけれど、今後の行動によって過去を良いようにも悪いようにも変えられることができますし、その権利は誰しもにあります」
 

■ジグさんのこと

・ジグさんの楽曲は、田口さんがボカロ沼堕ちして「ボカロPとコラボしてみたい!」という気持ちを湧きあがらせたきっかけ。一押しの曲は「シンデレラ」。この曲を聴いてオファーを決めた。
・とても繊細な歌詞とメロディーに拘りを持っている方。
・ジグさんの楽曲からは全身全霊を音楽にぶつけるような思いを感じる。そんなジグさんの気持ちを代弁するような気持で歌った。
・ジグさんの想いはMVにも詰まっていると思います。田口さん歌唱Ver.にはなくて、ミクさん歌唱Ver.にはあるもの、是非探してみてください。
 

■ジグさんのオススメ楽曲

▼シンデレラ

 

▼寂しい夏のせいにして

 

■「ペタルダンス」における田口さんのパフォーマンス

・この曲が流れるとラストか、と思ってしまうほどに締めくくりとしての鉄板曲になりました。
・落ちてくるギフトも心なしか花を模したものが多い気がする。
・ダイヤモンドフェスのジュウゴノシンゾウお披露目局のラストにも選ばれていました。「泣いたっていいの」の手の仕草はよくぞ抜いてくれました飛鳥さん…
 

■総括

歌詞を何度も反芻してみると、歌い手の田口さんへのメッセージとも取れるし、聴き手である自分にも何となく心当たりのあるような部分があり、「これは自分のことを歌った歌だ」と思えます。でも、作曲者であるジグさんが「そういう思いで聴いていただけると幸せです」と仰っていたので、私はきっと良い曲の聴き方をしているんだろうな。
今回のタグラブでは曲の解釈も含め、田口さん個人の人生観や今まで歩んできた道について、深く語られていました。
(彼の家庭環境とか1年前の事件にも触れるので、視聴時は注意してください)
 
・悲しんでいいとされるシーンで、その悲しみを受け取らず、避けていくように、目を逸らしていた。何故かは自分でもよく分からない。
・小さい時から、大人のいる場でキュートにお道化て振る舞うことで、その場を和ませることをごく自然にしていた。
・幼い時に両親が離婚するときも、本当だったら自分の気持ちを伝えたりして良かったのかもしれないけど、表には出さなかった。
・常に半歩先ぐらいの未来に目線を置き、それにマインドを持って行くようにしていた。それが所謂「ポジティブ」なんだと思うけど、そうすることで無意識に「見ないようにしていた部分」も多いと思う。

 

田口さんの口からこれを聴いた時は結構衝撃的だったなあ…。
衝撃と言っても、「え、そうだったの!?」というよりは、「ああ、薄々感じてたけどやっぱりそうだったんだ…」という衝撃でしたね。
そして何が悪いわけでもないのに、彼のそういう側面に気づいていながらも直視しようとせず、見なかったことにしていたファンの自分を無意味に責めました。
「僕が笑っていると、皆が笑ってくれるから」といつだかの雑誌インタビューで言ってくれたよね田口さん。けど、彼だっていつも笑えるような状況でもなかった。泣きたい時だってあったでしょうよ。そんな当たり前のことに気づかず、ただ憧れだけを抱いているファンはその笑顔を有難く受け取っていた。ファンと言うのは愚かですね。それとも、私たちのような存在が彼をそうさせているのかな。
色々と彼の言葉から引用してますが、要は「僕らは弱いけど強がって生きてた」ということを彼は言いたいのだと思います。
 
アイドル時代の田口さんの感情表現の中には、「喜怒哀楽」のうちの「喜」や「楽」しかなくて、「哀」や「怒」が殆どありませんでした。
その時はそれが普通だと思ってたし、そこが自分の「憧れの偶像」でもあったんだけど、現実的に考えられるとそんなことあるわけないんだよなぁ…とやっと最近になって気づきました。(悲しんだり怒ったりしない人間なんていないよ)
10年以上の付き合いのあるメンバーは、彼が「哀」や「怒」の感情を剥き出しにしたところを見たことがあるのだろうか、というのは未だに疑問に思っています。
また、彼が自分の言葉で時々書いていた歌詞も、「それは本当に貴方が心から叫びたい事なのか?」と感じることが割と少なくなかったんです。
 
おそらく彼も無意識のうちに道化を演じる生活をしていて、時々胸に閊えたモヤモヤやイライラというのは可能な限りスルーして生きてきたんでしょう。
でも、見えない負債というのは自分でも分からない格納先に溜まっていき、ある時ある瞬間にとんでもない爆発事故を起こす時があって。
ただ、その時負債を生み出す原因となっていた人は全く反省していなくて、「お前はそういう役割でしょw」「真に受けんなよー」と言ってきたりして話にならない。そんなの、受けた側じゃないから平然と言えることなのにね。
その中でも客観的に彼を見てくれていた周りの方々がサポートしてくれているようで、彼も自分の心に向き合っていたようで少し安心しました。
あの事件から、どんなに対人関係を見直しても悪縁を絶っても、彼自身が自分の弱さに向き合い、認めなければ根本的に何の解決もできないと思っていた私は、この動画を見て「彼なら頑張れるかもしれないな」と感じました。
 
・芸能の世界に入って、友達が増えたり、会えるはずの無い人に会えたりして、「夢を見せてもらった」部分がある。
・その場で自分はいつも明るくいて、皆がハッピーになれるようにギブアンドテイクを考えていた。
・でも、これからは自分に素直に生きていってみようかな…と最近は思っている。
 
彼が「生きていく」中で「表現していくこと」は、今後も避けてはいけない道なんでしょう。
でも、その表現の中身や方法は、少しずつ今後変えていっても良いんじゃないかと私は思います。
今まで彼は「見る人皆がハッピーになれるように」、夢やおとぎ話のようなパフォーマンスに注力してくれました。
けど、必ずしもそれじゃなくても良いんです。たまにはリアルな悲しみや怒りを表現したっていいんです。いつも陽気なリリックやダンスじゃなくてもいいんです。
貴方が持っている哀も怒りも、陰も闇も、全て表現できるようになると今より少し生きやすくなるんじゃないかな。もちろん、喜や楽や陽の部分もね。
「貴方の正解を貴方だけの大切なものにする」のは痛いことだけど、きっとみんなが本来の貴方を受け入れてくれる日が来ると思うんです。
底抜けに明るい田口さんにも、実は内に秘めてる寂しさや悲しみや怒りがどこかにあるでしょうよ、人間だもの。
だからいつか腹割って話せる日が来ると良いね。それはできれば「音楽」の中で。それが、「アーティスト」としてのあるべき姿だと思います。
 
私はまだ彼が独立する前のファンですが、その昔、ステージ上の彼は「二次元」とか「アンドロイド」と形容されることが多かったです。
それは勿論、美しい容姿や現実味の無いオーラを最大限表現しているだけの「誉め言葉」に過ぎないんですが、今思えば「人間味がない」「温度を感じられない」みたいな意味も含んでたかなー…と。それは、ある人には神秘的に映り、ある人には不気味さを感じさせ、ある人には何の興味も抱かせなかったかもしれません。
しかし最近の田口さんは、こういう言葉で表現されることが少なくなったと思います。それだけパフォーマンスにもトークにも人間らしさが出てきたってことじゃないでしょうか。
 
今まで「エラー」として処理して、弾き飛ばしていたものは全て、人間誰しもに生まれる「負」の感情。
今度からはそれを全てDELETEせず、悲しみや怒りも歌声にして咲かせていって欲しいなぁ…と、アンドロイドの無限の表現力を感じた一曲でした。