今日という日は残りの人生の最初の日

人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

躊躇いを乗り越えた先に在る物 ―『祈るほど後悔』を聴いた感想

やっと休みに入るので早速自堕落モードになってます。

良い感じに酔いが回ってきたのでその流れに乗るような気持ちでまたレビュー書きます。
毎回こんな時間に飲んでるけど人とは生活時間帯が違うお仕事をしている故…
過度な期待はせず軽く読んでください。
 

■祈るほど後悔 feat.savasti

▼Music&Lyric:savasti様
Movieみゅ〜ま様 
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.
 
▼田口さん歌唱Ver.
 
▼ボカロP対談(アサイウミ ×savasti × 田口淳之介

 

▼“TA”Good Night LIVE vol.3 -祈るほど後悔-

■田口さんによるレビュー

・他のボカロPからも「気になる曲」としてよく挙がっていた曲。
・イントロからアウトロまで同じ展開が全くないので飽きが来ない、あっという間に聴ける曲。トラックとしての完成度の高さから成り立っているもの。
・サビの「嫌になって幸せになって」のちょっと掠れた感じが聴きどころ。
 この曲特有のダークサイドな部分を表現するためにそういう歌い方に拘った。
・「嫌嫌嫌」の部分のキーの高さ。ミクさん版のデモを貰った時は「!?」と思ってどういう声を出せばいいのかと。ミクさんは地声で歌えるけど人間には不可能。テンポ感を意識して自分はファルセットで歌った。
・最初から最後までずっと歌詞が入っているので「魅せられる」曲に仕上がったと思う。
 

■制作過程

・savastiさんは田口さんからのオファーによる参加。
・どういうテイストの楽曲にするかという打合せで、savastiさんが自ら作ったプレイリストを聴かせてもらった。
 田口「でもぶっちゃけsavastiさんの曲が俺は一番好きだった」
・savastiさんから見た田口さんのイメージはリーガル・ハイの蘭丸。あのドラマは自分にとって青春。田口さんの演じている蘭丸もすごく好きなキャラだった。
 savastiさん「実際に会った時は『スタイルめっちゃいいしカッコイイしやば!!』という印象だった」
 ずっと笑ってくれるのですごく話しやすかった。
・田口さんのライブを見に来てくれたsavastiさん。自分の原点に戻ったというか、「自分もこういうことやりたいな」と思えた。
・コロナの自粛生活で音楽制作には良い、かと思いきや外に出れないストレスで制作に気が入らないことが多かったというsavastiさん。
・savastiさんの思う聴きどころは、サビだけではなくそこに行きつくまでの盛り上がりの部分。
 田口「イントロで90%決まる!ぐらいの勢いで俺言っちゃってたよね」
・「嫌嫌嫌」の部分は最初から無理だと分かっていつつも一回地声で歌ってみた、でもやっぱり無理だった。
 田口「ちょっと試してみたくなってw」
・曲を作るにあたり、田口さんの歌声はすごく意識していた。制作前から既に田口さんのアルバムは聴いていて、ダンスミュージックとの相性の良さを感じていた。ボカロよりも寧ろ田口さんの声をイメージして作った。
 田口「滅茶苦茶難しかったけどねw」
・田口さんがレコーディングした歌声をsavastiさんが思うイメージに加工した。特に2番のAメロ。
 savastiさん「ミックス僕にやらせてください、必ず良くするので!」
・途中で「風邪ひきました…」と田口さんに連絡があった。夜通し作曲してしまうような入り込み具合。曲作りへの熱意を感じた。
 

■savastiさんのこと

・普段はダンスミュージックとボカロ曲を中心に活動。学生さん。
・「savasti」はサンスクリット語。自分の好きなアーティストがサンスクリット語から自分の名前を付けていたので自分もそうしたいと思った。意味は「繁栄」「希望」「成功」「幸せ」等様々。
・デビューは2018年。ボカロPとしてはアサイウミさんと同期。
 savastiさん「アサイウミさんの曲のピアノの旋律が綺麗なので自分も弾けるようになりたいと思った」
・曲作りは基本コードから始める。でも最近はギターを持ってメロディーから始めることも多い。ダンスミュージックはノリが大切なのでビートから始めている。
・リリックに関しては自己投影する場面が多い。バッドエンドが好き、という部分はアサイウミさんに凄く共感できる。
 savastiさん「(音楽なんかを聴いてて)最初は辛いけど2番で幸せになったりすると『あ、幸せになっちゃったんだ…』と思ってしまう」
・普段の生活では絶対に接することのない人と交流が持てたのでボカロやっててよかった。
 savastiさん「こうやって田口さんに出会えたのもボカロPやってたお陰です」
・「昏迷の味」という曲がとにかく好きな田口さん。電波工作の収録をするにあたってボカロを漁っているうちに、割と早い段階でこの曲に出会って衝撃を受けた。歌詞の「病んでる感」とトラックの完成度が耳から離れない。
・他の楽曲で気になった曲はオゾンさんの「What Color」。
 savastiさん「滅茶苦茶爽やかで一曲目に相応しい」
 

■savastiさんのオススメ楽曲 

▼昏迷の味
 
▼キャンディフリッピンと君

 

■「祈るほど後悔」における田口さんのパフォーマンス

・ジュウゴノシンゾウLIVEでもダイヤモンドフェスでもダンスミュージックとしてのパフォーマンスが凄く映えた曲。
・振り付けは田口さんのオリジナル。(タグラブの冒頭で仕込み中の話を少ししている)
・ダンスの仕込みをしてる時に「この曲スーツで踊りたいなあ」と思っていた。その影響かジュウゴノシンゾウでは黒スーツで踊っていた。
・「厭厭厭」の部分の脚上げは絶対に皆好きだと思う。ジュウゴノシンゾウLIVEで目にした時は「うひょおおww」って変な声出た。ダイヤモンドフェスの白スーツも全然アカンくなかった。
・スーツという衣装が映えるのはラストのジャケットを捲るような振付かな。衣装さえも振り付けの一部にしてしまう彼のダンスは中毒性高い。
 

■総括

ボカロ曲はどうしても歌詞に目線が集中してしまうというか、所謂「歌謡曲」的な要素が強いので、ここに来て音サウンドの深さを感じられた曲でした。

バリバリ加工の入った声というのは好き嫌いが激しいものだとは思うんですが、田口さんの声は割と加工がマッチする「ケロケロ映え」する歌声なので、ボカロ特有の機械音との相性の良さを改めて感じたかな。

1曲目から2曲目でひたすら前向きさを感じるようなストーリー構成になっている中、ここで敢えて迷いや闇のような要素を入れてきたのも抑揚があっていいと思います。
ノれる曲なのに歌詞がちょっと病んでるっていうのはボカロあるあるだよね(偏見)
でも他のボカロPでも彼がお気に入りの曲って割とそういう曲が多いと思うよ。
 
MVも静止画をちょっと動かした、というようなものではなく完全なる動画になってたのもインパクトが大きかったです。
けど見てるとサビ前はずっと同じ動きをひたすらループしてるんですよね。
何かを掴もうと手を伸ばしている少女がいるんですけど、直前で躊躇って手を引っ込めているような印象。
舞っているのは向日葵の花、この花の花言葉は色や本数によって様々なのでそこからの考察は難しい。
 
今回の制作過程のお話では主に音についてのお話が大半を占めているので歌詞の解釈は謎に包まれてます。
恋愛の曲とも取れるし、一人の人間が成長する過程の話だと言われたらそういう風にも取れる。
歌い手が田口さんなのでどうしても彼の生きてきた道や思いみたいなものを投影してしまうのですが、個人的には田口さん自身と言うよりは田口さんのファンに向けられたメッセージのようなものを感じたなあ…。(ここをあまり掘り下げすぎるとヘビーになるのであまり話したくない)
 
これは歌声だけでは分からないところなんですが、
ずっとずっとずっとそのままでいろ『!』
はは『笑』
お元気で『…』
といった語尾の部分に作詞者でもあるsavastiさんの意思を強く感じたような気がします。
同じ言葉でもエクスクラメーションマークとか三点リーダとかそういうものがつくと全然印象が違うもんねえ…。
 
2曲目のFEEL THE LIGHTで空気を打ち破る決意を固めたものの、いざ進むとなるとどうしても変化することを恐れてしまうような、そんな躊躇いのような感情をここで持ってきたのかなあ…と勝手に思ってます。
年齢を重ねれば重ねるほど、変化することは怖くなる。今まで自分が身を預けてきた「当たり前」を消し去って新しい自分に変わっていくのって、最初はワクワクしてもやっぱり怖いんですよ。
savastiさんがリリックに込めた想いは深いところまで聞けませんでしたが、「周りが着いて行けなくても自分は変わりたいから前に進む」みたいな感情を自分なりに受け取っています。ジュウゴノシンゾウに関わったボカロPさんは若い人が多いけど、変化を恐れない若さって強いよなあ。
 
変わるのは怖いけど、その変化を見届けられなかった時にはきっと後悔するんだろうな、という上手く言えない抽象的な思いを感じた曲でした。