今日という日は残りの人生の最初の日

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片道二時間の車窓から ―『サタデーナイトクルージング』を聴いた感想

休みというのはあっという間に終わってしまうものですねえ。

ちょっと特殊な仕事なので今の時間でも飲みながらPCカタカタできるんですが半日後は激務。
昨日のニコ生に癒されながら今日も今日とてレビューを書く。
片手間にでも読んでいただけると幸いです。
 

■サタデーナイトクルージング feat.R Sound Design

▼Lyric&Music&Movie:R Sound Design様

 ・Vocal(ボカロ版):初音ミク

 

VOCALOID Ver.

 

▼田口さん歌唱Ver.

 

▼ボカロP対談(R Sound Design × ノイ × 田口淳之介

 

▼”TA”Good Night LIVE vol.5 -サタデーナイトクルージング-

 

■田口さんによるレビュー

・ゆったり聴けるオシャレな曲。ドライビングのBGMとして聴ける曲という感じ。
・ボカロ版と田口さん版ではMVで車で走っている場所が違う。キーや重低音の強弱もそれぞれで違うので違う曲みたいにも聴こえる。
・Rさんの新曲は半年ぶりぐらい。
・1曲目からノリの良い曲が続く中、この曲は少し心を落ち着かせるようなパートになっている。
 田口「この曲順でライブとかやりたいな」(実現しましたね)
・歌詞もメロディーも「会いたくても会えない人を思っている」雰囲気。でも激しく伝えない、メロウな表現の仕方を歌う時にも意識した。
・息継ぎが激ムズだった、特にサビ。ボカロには息継ぎという要素がないけど、人間が歌うと意外にキツいのでライブではどう魅せようかと考えている。
・今のコロナ渦のステイホームの心情も盛り込んでいる。
・切ないけど前向きな心も感じる。所々で自分で自分に言い聞かせているような歌詞が印象的。
 田口「なんていうか、『お前、しっかりしろよ』みたいな」(もう子供じゃないんだから、の部分かな)
 

■制作過程

・Rさんは田口さんからのオファーによる参加。
・田口さんのプロジェクトに参加するにあたり、「ジグさんにも話が行ってるんじゃないかな」と察知して、少しジグさんと話をした。(その察知すごい…)
・制作にあたって田口さんと実際に対面。ハチ公の前で待ち合わせ。
 田口「颯爽と現れたRさんを見た時は『めちゃめちゃイケメン来た!』って!」
 Rさん「いやあの、その時も言いましたけど、田口さんがそれ言うのはちょっと…w」
・普段受ける依頼はアーティストさん個人への楽曲提供として音楽制作会社からオーダーを受け、それに沿った曲を作る…という一方向的なものなので、今回はボカロ側とアーティスト側で発表する、両方向で走るものであったことが自由度が高く楽しかった。
・歌詞の世界観に浸っていただきたい、誰でも経験したことがあるような内容なのでそれぞれの聴き手に共感できるような内容にした。
 

■R Sound Designさんのこと

・2016年からボカロPデビュー。シティーポップといわれるジャンルの楽曲をよく作っているが、音楽は色々なジャンルを聴いている。
・「帝国少女」も「flos」もYoutubeで数百万再生越えの超人気ボカロP。様々なシーンに楽曲提供を行っている方。
・対談はノイさんとご一緒に出演。「憧れの存在であるRさんのお話を聞きたい」ということと、カメラが趣味と言う共通点があることから、ノイさんよりRさんを対談相手にご指名。
・元々バンドをしていて、そのバンドが解散した後に一人でも楽曲制作したいと思い、ボカロを使用した曲を作ろうと思った。初めて聴いたボカロ楽曲はSupercellさんのメルト。
・歌詞の中で、時代を反映しすぎていて色褪せてしまうような言葉は使わないようにしている。
 Rさん「例えば『携帯』とか言っちゃうと前時代的だし、その時代を象徴しすぎてしまう」
・田口さんがボカロにハマったきっかけである曲の一つとして「flos」がある。「帝国少女」でついた自分のイメージから少し一皮剥けたいという思いから、色鮮やかな映像で跳ねているようなリズムの「flos」を作った。
・映像制作もご自身で行っている。でも、自分は作曲がメインなので映像制作にはあまり時間をかけ過ぎず、今まで全て1日で編集して上げている。
・仲の良いボカロPとはやっぱり音楽の話がメイン。でも印税とか税関係のリアルな話をすることもある(笑)
・ボカロのセルフカバーもしている。でも自分で歌ってみることはあってもボカロは切り離せない関係。
・Rさんの本業は、半分公言しているけどなんとお医者様。どちらかでも良いけどどちらも好きで一生やっていきたいことなので、時間がないながらどうにか食らいついている。
・歌ってくれる初音ミク、MVを作ってくれる絵師さんなどを含め『人と一緒に創作する楽しみ』をこれからデビューする方には感じて欲しい。
・他の楽曲で気になった曲は左手さんの「DIDA DIDA DIDA」と、水彩画Pさんの「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」
 Rさん「意外性、という意味でこの2曲が気になった」
 

■R Sound Designさんのオススメ楽曲

▼flos

 
▼帝国少女

 

■「サタデーナイトクルージング」における田口さんのパフォーマンス

・息継ぎが難しい曲、と本人も言っていた通り、ライブでの生のパフォーマンスは確かに歌うのが難しそうだった。ダンスミュージック続きの前4曲に続き少し落ち着いたパートではあったけれども、歌うだけでも難易度の高い曲だと思う。
・私個人はジュウゴノシンゾウLIVEでのパフォーマンスが初見。
 田口「今日はサンデーだけどサタデーナイトクルージング」
・メロウな曲調なのでダンスは無し。でも、マイクを持ってない方の手で、歌詞を表現するような動きが自然と出ていたのに皆さんお気づきだろうか。「時はtic-tac」とか「過去へget back」とか「無駄な妄想」とか全部歌詞とリンクした動きになってるんですよ。決まった振付が無くても身体を使った表現は常に自然に出てしまう人なんだなあ、と感じたものでした。「ええー見てなかった」って方はジュウゴノシンゾウLIVEのUSBが届いたら是非見て頂きたい。
 

■総括

ジュウゴノシンゾウに参加されているボカロPを見て、電波工作に関わっている方は別として皆さん私の知らない人ばかりだったことに時代を感じました。
一応ボカロ歴は田口さんより断然長いんだけどな…。今回参加していただいたRさんなんて、ボカロ界じゃ知らない人なんていないレベルの有名処であると後になって知った時には「私はもう若くねえんだ!!」と思ってしまいました。私の青春時代なんてそれこそメルトとかmagnetとか悪ノP辺りだよ…。
 
さて、もう私は若くないんだ、という話から連動すると、この楽曲からはとても大人の恋愛模様のような雰囲気を感じましたね。
曲の視点の人物像を固定するのって聴き手の幅を狭めてしまいそうで本来好きじゃないんですが、午前0時に車内からの夜景を眺めているというシチュエーション・たまには「やりがいってやつも妙に心地が良い」、と思うような達観具合・「もう子供じゃないんだから」というフレーズから、この曲の主人公にあたる人物が「大人」であるようなイメージは何となく読み取れました。
恋愛は老若男女問わず誰でも一度はするものですが、やっぱり若い時の恋愛と大人になってからの恋愛って違うところがあって。
中高生の恋愛の場合、「明日の昼休み一緒にご飯食べよう」とか「今度の土日どこ行く?」とかお互いの生活時間帯がマッチするパターンが多くて、最早会えない日がないぐらいの方々もいると思います。
また、大学生や社会人になるとそこが少し合わなくなるけど、「会いたいよ」「じゃあ、今から会う?」みたいな、昼夜問わず「会おうと思えば会える」というフットワークの軽さとオールしてでも遊びたい!みたいなパワーと自由さがあります。
でも、お互い社会の中では「中堅」といえるような立場になると、「会いたいけど会えない」という場面が多々出てくるんですよねえ。
お互いの休みが合わなかったり、急なトラブルで残業になったり、大きなプロジェクトを任されて業務時間外も時間に追われて神経を尖らせなければならなかったり…
特に制作者のRさんはお医者様ということもあり、このコロナ禍では実に多忙な生活を送っていたでしょうから、そのようなシーンも数多くあったのではないんでしょうか。
 
私は25歳の時に実家を出て一人暮らしを始め、福岡の中では大都市と言える場所で今は仕事を行っているのですが、その移行期中は実家から福岡まで片道2時間かけて通勤してました。
通勤時間に往復4時間も取られてはそりゃあ会いたい人に会えるような時間なんて取れなくて、「会いたいなあ、でも家に着く頃はもう深夜近いからなあ」とただ高速バスの車窓を眺めるような日々でした。(深夜近くに気軽に誘えない、というのも大人になってからはよくある遠慮の仕方だと思う)
私は自家用車はなく高速バスによる移動でしたが、その2時間余りの車窓から見える風景を見ながら、ちょっとした気怠さに浸るのは割と嫌いじゃなかったです。
「今のこの気怠さと切なさは自分が頑張った証拠、今度会った時には一番好きなあの人から成長した自分を思う存分褒めてもらうんだ」と言う思いで、すっかり暗くなった車窓を眺めていたことを思い出してます。
周りの友達にも「そんなに通勤時間に時間取られてまでやりたい仕事なの?」としょっちゅう言われてましたが、都心部に来ると仕事の幅も増えるし、新しい方との出会いや人脈もたくさんできるので、自己を成長させるという意味では今までを振り返っても大切な期間だったと思います。
お互いのことが好きだからこそ、相手に恥じない生き方をしたい。会いたいと思う気持ちを押し殺して自分が成長できた時、きっと再会した暁には今までよりずっと魅力的な女性に映るのではないか、という期待を込めて、今が踏ん張りどころだと当時は片道2時間の通勤路を走っておりました。
それぞれがお互いの足で立っていられる関係って、大人になれた者同士だけが楽しめる恋愛模様といった感じで私は好きです。
 
そんな、アラサーになった今だから身に染みる大人の恋愛の曲でした。