今日という日は残りの人生の最初の日

人生を充実させるコツは、より多くのものを好きになること。

アンドロイドの涙 ―『ペタルダンス』を聴いた感想

最後の曲になりました。

田口さん自身にとっても、ファンにとっても思い入れのある曲なので、
締めくくりとして大切に書かせていただきます。
 

■ペタルダンス feat.ジグ

▼Lyric&Music:ジグ様

Illust大城慎也様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼アルバムに参加した感想は?ボカロPアンケート!

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.14 -ペタルダンス-  

 

■田口さんによるレビュー

・ラストに相応しい、このアルバムを締め括る一曲。
 デモを聴いた時点でこの曲は最後の締めくくりの曲として持ってきたいと思った。
・タイトルの「ペタル」は「花びら」、「ダンス」は「踊る」という意味がある。
・人への羨望や嫉妬など、雑念が入った感情に苛まれたときに聴いて欲しい。
・イラストの:大城慎也様がTwitterでイラストを公開した時のコメントは、「花弁が美しく散るのは、美しく咲いたから」。 田口さんもここには大きく共感した部分があり、自分も芸能活動はいつまで続けられるか分からないが、最後は綺麗に散っていきたい。
・「貴方の正解は貴方だけのものだ 大切にして 痛いけど」はジグさんのお気に入りのフレーズ。この楽曲において貴方だけの正解を見つけてほしい。
 

■制作過程

・ジグさんはオファーによる参加。
・田口さんからジグさん宛に直撃で連絡したところ、プロジェクトへの参加を快く承諾してくれた。
・自分が思っていること、言いたいことを詳らかにしてくてこの曲を作った。自分の中に少なからずはあろう部分、他人に寄り添えそうな部分を切り取って作った曲なので、「これは自分のことを歌った曲だ」なんて思ってもらえたら幸せです、とジグさん。
・最初は「シンデレラ」のようなノリの良い楽曲をお願いしたいな、と思っていたが、「僕はこういう曲を出した方が良い方向に行くと思う」というジグさんの想いを受け取って、「ペタルダンス」が出来上がった。
 ジグさん「オーダー通りに作ることもできたのですが、どうしてもやりたいことがあり、そのやりたいことが最良の結果になると信じていました」
・最初にリリック丸ごと完成したデモを一番早く頂いた。それを聴いてみた時、「俺自身へのメッセージかな」と感じたが、飽くまでそこに込められているのは「ジグさんの思い」。自分は歌い手として、ジグさんの思いを声に乗せてしっかりと届ける使命があると思った。
・「未来は変えられるけど過去は変えられるから」というフレーズについて。
 ジグさん「僕がひねくれているからか、よくある『未来は変えられる』というフレーズにピンときたことがありません。誰も未来のことは分からないけれど、今後の行動によって過去を良いようにも悪いようにも変えられることができますし、その権利は誰しもにあります」
 

■ジグさんのこと

・ジグさんの楽曲は、田口さんがボカロ沼堕ちして「ボカロPとコラボしてみたい!」という気持ちを湧きあがらせたきっかけ。一押しの曲は「シンデレラ」。この曲を聴いてオファーを決めた。
・とても繊細な歌詞とメロディーに拘りを持っている方。
・ジグさんの楽曲からは全身全霊を音楽にぶつけるような思いを感じる。そんなジグさんの気持ちを代弁するような気持で歌った。
・ジグさんの想いはMVにも詰まっていると思います。田口さん歌唱Ver.にはなくて、ミクさん歌唱Ver.にはあるもの、是非探してみてください。
 

■ジグさんのオススメ楽曲

▼シンデレラ

 

▼寂しい夏のせいにして

 

■「ペタルダンス」における田口さんのパフォーマンス

・この曲が流れるとラストか、と思ってしまうほどに締めくくりとしての鉄板曲になりました。
・落ちてくるギフトも心なしか花を模したものが多い気がする。
・ダイヤモンドフェスのジュウゴノシンゾウお披露目局のラストにも選ばれていました。「泣いたっていいの」の手の仕草はよくぞ抜いてくれました飛鳥さん…
 

■総括

歌詞を何度も反芻してみると、歌い手の田口さんへのメッセージとも取れるし、聴き手である自分にも何となく心当たりのあるような部分があり、「これは自分のことを歌った歌だ」と思えます。でも、作曲者であるジグさんが「そういう思いで聴いていただけると幸せです」と仰っていたので、私はきっと良い曲の聴き方をしているんだろうな。
今回のタグラブでは曲の解釈も含め、田口さん個人の人生観や今まで歩んできた道について、深く語られていました。
(彼の家庭環境とか1年前の事件にも触れるので、視聴時は注意してください)
 
・悲しんでいいとされるシーンで、その悲しみを受け取らず、避けていくように、目を逸らしていた。何故かは自分でもよく分からない。
・小さい時から、大人のいる場でキュートにお道化て振る舞うことで、その場を和ませることをごく自然にしていた。
・幼い時に両親が離婚するときも、本当だったら自分の気持ちを伝えたりして良かったのかもしれないけど、表には出さなかった。
・常に半歩先ぐらいの未来に目線を置き、それにマインドを持って行くようにしていた。それが所謂「ポジティブ」なんだと思うけど、そうすることで無意識に「見ないようにしていた部分」も多いと思う。

 

田口さんの口からこれを聴いた時は結構衝撃的だったなあ…。
衝撃と言っても、「え、そうだったの!?」というよりは、「ああ、薄々感じてたけどやっぱりそうだったんだ…」という衝撃でしたね。
そして何が悪いわけでもないのに、彼のそういう側面に気づいていながらも直視しようとせず、見なかったことにしていたファンの自分を無意味に責めました。
「僕が笑っていると、皆が笑ってくれるから」といつだかの雑誌インタビューで言ってくれたよね田口さん。けど、彼だっていつも笑えるような状況でもなかった。泣きたい時だってあったでしょうよ。そんな当たり前のことに気づかず、ただ憧れだけを抱いているファンはその笑顔を有難く受け取っていた。ファンと言うのは愚かですね。それとも、私たちのような存在が彼をそうさせているのかな。
色々と彼の言葉から引用してますが、要は「僕らは弱いけど強がって生きてた」ということを彼は言いたいのだと思います。
 
アイドル時代の田口さんの感情表現の中には、「喜怒哀楽」のうちの「喜」や「楽」しかなくて、「哀」や「怒」が殆どありませんでした。
その時はそれが普通だと思ってたし、そこが自分の「憧れの偶像」でもあったんだけど、現実的に考えられるとそんなことあるわけないんだよなぁ…とやっと最近になって気づきました。(悲しんだり怒ったりしない人間なんていないよ)
10年以上の付き合いのあるメンバーは、彼が「哀」や「怒」の感情を剥き出しにしたところを見たことがあるのだろうか、というのは未だに疑問に思っています。
また、彼が自分の言葉で時々書いていた歌詞も、「それは本当に貴方が心から叫びたい事なのか?」と感じることが割と少なくなかったんです。
 
おそらく彼も無意識のうちに道化を演じる生活をしていて、時々胸に閊えたモヤモヤやイライラというのは可能な限りスルーして生きてきたんでしょう。
でも、見えない負債というのは自分でも分からない格納先に溜まっていき、ある時ある瞬間にとんでもない爆発事故を起こす時があって。
ただ、その時負債を生み出す原因となっていた人は全く反省していなくて、「お前はそういう役割でしょw」「真に受けんなよー」と言ってきたりして話にならない。そんなの、受けた側じゃないから平然と言えることなのにね。
その中でも客観的に彼を見てくれていた周りの方々がサポートしてくれているようで、彼も自分の心に向き合っていたようで少し安心しました。
あの事件から、どんなに対人関係を見直しても悪縁を絶っても、彼自身が自分の弱さに向き合い、認めなければ根本的に何の解決もできないと思っていた私は、この動画を見て「彼なら頑張れるかもしれないな」と感じました。
 
・芸能の世界に入って、友達が増えたり、会えるはずの無い人に会えたりして、「夢を見せてもらった」部分がある。
・その場で自分はいつも明るくいて、皆がハッピーになれるようにギブアンドテイクを考えていた。
・でも、これからは自分に素直に生きていってみようかな…と最近は思っている。
 
彼が「生きていく」中で「表現していくこと」は、今後も避けてはいけない道なんでしょう。
でも、その表現の中身や方法は、少しずつ今後変えていっても良いんじゃないかと私は思います。
今まで彼は「見る人皆がハッピーになれるように」、夢やおとぎ話のようなパフォーマンスに注力してくれました。
けど、必ずしもそれじゃなくても良いんです。たまにはリアルな悲しみや怒りを表現したっていいんです。いつも陽気なリリックやダンスじゃなくてもいいんです。
貴方が持っている哀も怒りも、陰も闇も、全て表現できるようになると今より少し生きやすくなるんじゃないかな。もちろん、喜や楽や陽の部分もね。
「貴方の正解を貴方だけの大切なものにする」のは痛いことだけど、きっとみんなが本来の貴方を受け入れてくれる日が来ると思うんです。
底抜けに明るい田口さんにも、実は内に秘めてる寂しさや悲しみや怒りがどこかにあるでしょうよ、人間だもの。
だからいつか腹割って話せる日が来ると良いね。それはできれば「音楽」の中で。それが、「アーティスト」としてのあるべき姿だと思います。
 
私はまだ彼が独立する前のファンですが、その昔、ステージ上の彼は「二次元」とか「アンドロイド」と形容されることが多かったです。
それは勿論、美しい容姿や現実味の無いオーラを最大限表現しているだけの「誉め言葉」に過ぎないんですが、今思えば「人間味がない」「温度を感じられない」みたいな意味も含んでたかなー…と。それは、ある人には神秘的に映り、ある人には不気味さを感じさせ、ある人には何の興味も抱かせなかったかもしれません。
しかし最近の田口さんは、こういう言葉で表現されることが少なくなったと思います。それだけパフォーマンスにもトークにも人間らしさが出てきたってことじゃないでしょうか。
 
今まで「エラー」として処理して、弾き飛ばしていたものは全て、人間誰しもに生まれる「負」の感情。
今度からはそれを全てDELETEせず、悲しみや怒りも歌声にして咲かせていって欲しいなぁ…と、アンドロイドの無限の表現力を感じた一曲でした。
 

シャッターを切る瞬間 ―『フライアウト』を聴いた感想

しばらく振りです…

9月は割とのんびり過ごしましたが10月から年末にかけては濃い期間になりそうですね。
忙しくならないうちに書きます。
 

■フライアウト feat.ノイ

▼Lyric&Music:ノイ様

Illustなむさん様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(R Sound Design × ノイ × 田口淳之介

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.13 -フライアウト-

 

■田口さんによるレビュー

・公募で150名以上の中から選ぶのはプレッシャーが凄かったがやっぱり聴いてて楽しかった。
・ボカロ曲のデモを聴いていても、「自分が歌ったらどうなるか」という部分はとても意識していた。
・ノイさんを選んだきっかけはギターサウンドの勢いとカッコよさ。一番好きになった曲は「インダイレクトメッセージ」。テンポが速くてノリの良いメロディーと歌詞のインパクトに「勢いを感じる曲だな」と感じ、お願いしたいと思った。
・デモを頂いた時点で「ジュウゴノシンゾウ」の推し曲になると感じた。
BPMのテンポが速いし(BPM182)キーも高いので歌うのが凄く難しかった。
・タイトルの「フライアウト」に込めたノイさんの思いは「窮屈な観念から飛び出す」「不満足な現実から抜け出せ」。田口さん自身にもグッとくるタイトルになった。
・世の中自分の思い通りにならないこともたくさんあり、強者が迫ってくる中で「自分が行く未来」を愛して前に進んで行くイメージを歌詞の中に強く感じた田口さん。サビが一番爆発的にパワーを感じる曲。
 ノイさん「とにかく田口さんを強くイメージして作りました」
・自分の声とロック調の曲は意外に合うかもしれない、という新たな発見を感じた。
 

■制作過程

・ノイさんは公募での参加。
・田口さんとノイさんは制作において直接お会いした。遠いところはるばる車で来てくださったノイさん。
 ノイさん「こんな顔ちっちゃい人いる!スタイル凄いな!って…」
 ノイさん「脚ほんとに7メートルありました」
・活動開始して1年弱、何か新しいことに挑戦したいと思っていたタイミングで丁度田口さんのプロジェクトに出会った。
・応募したタイミングではどんな曲を作るかは明確に考えていなかった。でも、公募で選ばれて田口さんと直接お会いした時、ボカロへの熱意やプロジェクトへの思いを聞かせてもらってから、「フライアウト」のイメージが浮かんだ。
・不安な気持ちを抱えながら生きている方へ、前向きな気持ちを届けたいという思いを込めたリリック。
・Cメロの早口な部分が聴きどころ。その難しいパートを田口さんがカッコよく熱く歌ってくれて、良い仕上がりになったと思う。
・キーを調整する時、自分の声の限界に挑戦したくて敢えて少し高めのキーを設定した。
・アルバムの曲順やライブのセトリにはストーリー性を意識しており、「フライアウト」は一番の盛り上がりの部分に持って行きたかったのでラストの一曲前の位置に置いた。
・MV絵師のなむさんにはDMで直撃。でもノイさんと一緒にイメージを投げかけたりしたらすぐにイメージ通りのラフが来た。
 ノイ「すごく綺麗な絵を素早く仕上げてくださって嬉しかったですね!」
・ボカロ版を聴いて、実はバーチャルな世界に生きる彼女たちも「人として生きてみたい」と思ったりするのかなって勝手に想像した。
 

■ノイさんのこと

・去年に初投稿、ボカロPデビューしてから1年弱。エレキギターの音をメインにしたロック調の曲を作っている。ボカロ界隈に入って間もなく、あまり知り合いもいないのでこれから仲良くしてくださる方がいらっしゃると嬉しい。
・対談はR Sound Designさんとご一緒。ボカロ界の第一線で活躍されている方と対談したいというご本人様からのご希望。
・かつてはバンドで音楽活動をしていた。バンドの場合はメンバーとの個性のぶつかり合いで生まれる楽曲が多いので、ボカロPとして個人で制作するとやっぱり違う。
・制作の時は作詞にとても気を付けている。曲を聴いてくださった方に不快になって欲しくない為、批判的なことはリリックに書かないようにしている。
・人と話すのが苦手なので、そんな自分が書いた言葉を好きになってくれる方がいるのが嬉しい。日本語の意味を正しく理解するために辞書を引きながら作詞している。
・映像へのこだわりはあるが、やっぱり曲に時間をかけたいので信頼できる方に細かくイメージを伝えて任せている部分が多い。
・ステージで人が歌っている様子を想像して曲の展開を考えたりもしている。
・ボカロは自分の音楽制作において欠かせない大切な相棒。生身の人間が歌っている曲を作ってみたいという思いはあるが、それでもボカロが歌う曲の投稿は常に並行したい。
・ノイさんは喋っていてもとても落ち着いていて、穏やかで可愛い。
 田口「ノイさんの声可愛いね」
 田口「可愛いよ、可愛いよ〜」(好き過ぎやろw)
 でもこんな力強い楽曲を書くというギャップがとても好きになった。
・ボカロ文化の中で羽ばたきたいという田口さんの思いを真っ直ぐな澄んだ目で真剣に聴いてくれた。
・初対面では緊張して上手く喋れなかったので、また改めてお会いしたい旨を田口さんに伝えたノイさん。その後Twitterで「一人でカラオケ行きます」みたいなツイートをしてたので思わず「一緒に行こうよ」とリプした。すごく癒される存在だけど、ギターやベースのパワーのある楽曲を作るノイさんには期待しかない。
 ノイさん「また一緒にやりたいです!」
・他の楽曲で気になった曲はジグさんの「ペタルダンス」。
 ノイさん「まずアルバムを前曲通して聴いた時、曲順が凄く良いなと思いました。自分の曲が13曲目に来て、その後を綺麗に締めくくっていて素晴らしいなと」
 (曲順に凄くこだわっていた田口さんからするとこの感想はすごく嬉しかったと思う)
 ノイさん「あとラスト3曲がカタカナ6文字って凄く面白いなってw」
・ライバルの方へのメッセージとして、総括するとリスナーの方の声に励みを貰いながら自分らしく頑張って頂きたいと言う旨を一生懸命語られていました。
 ノイさん「あ、まとまらないw」
・アルバム「余白」をリリース中(欲しい…)
 

■ノイさんのオススメ楽曲

▼インダイレクトメッセージ

 
▼ソーシャルディスコード

 

■「フライアウト」における田口さんのパフォーマンス

・ご本人も「推し曲」と仰っていた通り、様々なステージで歌われた楽曲でした。
・ダイヤモンドフェスという、ある意味勝負の場と言える舞台で歌われる一曲としても選ばれました。あれは素晴らしいフェスでしたがラストで「FLYOUT」のテキストが大きく出た演出に妙に感動しました。(曲名に対するリスペクトを感じた)
・Live in JT HomeのVol.9では一発目の曲として、Vol.10ではラストの曲として歌ってましたね。一番最初と一番最後の曲はライブのセトリでも重要な部分なので、そこから曲への愛が伝わってきます。
・田口さんの歌声は力強い歌詞や曲調でもどこかご本人の優しさを隠し切れないような印象があって、この曲からはそれを強く感じます。
 

■総括

対談やタグラブの様子から、田口さんがノイさんを大好きなことは凄く伝わってきます。
ボカロPさんとしてはまだ新人さんに該当する方みたいですが、Twitterをフォローしているとジュウゴノシンゾウでご一緒したシシドさんやRさんと会話しているところを時々お見掛けして、微笑ましい気分になります。
田口さんが繋いだ縁だと思うと少し誇らしいですね。
 
音楽素人なのでサウンドの部分についてはあまり詳しく語れないのですが、歌詞については本当に皆様個性豊かな方が集まったなーと思います。
ノイさんのリリックに強く感じたのは、「日本語って難しいー!」という印象です。
先天性」とか「相対的」とか「暫定」とか「不完全体」とか、「何となくのイメージは分かるんだけどちゃんとした言葉で説明しろと言われると自信がない」という単語があちこちに散りばめられています。辞書を引きながらリリックを書くと言われていたのがとてもよく分かりますね…。
けど、この楽曲に関しては正しい単語の意味を知ることより、言葉のニュアンスから全体のイメージを感じ取ることこそが一番面白い聴き方なのではないかとMVを観ていて強く感じました。
MVイラストは高いビルの屋上から飛び立っているような少女で、よく見ると手錠を着けていてその鎖を自ら断ち切っているような絵となっています。周囲にはその少女と群れるように鳥が飛び交っていますね。
そして曲名は「フライアウト」。この曲の歌詞にその単語は出てきませんが、書き手の思いが一番籠もっているのはメロディーや歌詞より寧ろ曲名ではないか?と色々な方の楽曲を聴いてて思うんですよ。
興味本位でジュウゴノシンゾウの曲名と歌詞の関連性を調べてみました。
 
▼歌詞の一部が曲名に組み込まれている曲
「What Color」・「FEEL THE LIGHT」・「祈るほど後悔」・「DIDA DIDA DIDA」・「サタデーナイトクルージング」・「路地裏探訪」・「閉花予想」・「stay with me」・「ニライカナイ」の計10曲
 
▼歌詞に曲名が入っていない曲
「Miss you」・「慣性スケーター」・「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」・「フライアウト」・「ペタルダンス」の計5曲
 

 

んー、こうやって並べると少なからず曲名と歌詞というのはリンクしているものなんですね。
「Miss you」と「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」はそのまま歌詞に出てくることはないものの、限りなく近いことは言ってるので歌詞と曲名の明確な言葉の使い分けを感じたのは残り3曲かなあ。
「フライアウト」については制作過程を聞く限りは曲が出来上がった最後に仕上げでつけたものに思えたので、このカタカナ6文字に作曲者であるノイさんの世界観が込められていると感じます。
 
突然曲と全然関係ない話なんですが、最近ようやくFC会報が公開されましたね。
その中のDIAMOND Fesのページは飛鳥さんがカメラマンを担当されていました。FCの会員の方ならあの写真の素晴らしさは確認されたと思います。
 
生の田口さんを一度見てしまうと、その後どんなに鮮明で滑らかな画像や映像を見ても、「ピクセル数とコマ数が足りねえなあ?」と思ってしまうのは周知の事実です(だと勝手に思っている)
でも、あの飛鳥さんの撮った数枚の写真には「彼の最も限りなく正解に近い一瞬を抜いている」という感動があり、同時に飛鳥さんのカメラマンとしての才能を感じずにはいられませんでした。
田口さんはポーズ指定して撮ってもらう所謂グラビア写真より、ライブや撮影の中のほんの一瞬を切り取ったような動きのある写真の方が映える人だと思っているので、故にシャッターチャンスが非常に少なく、撮る方はとても苦労するだろうな…と思います。
Twitterを見てると飛鳥さんのお写真は美しい鳥の姿を捉えたものが多い為、自由に動き回るものを撮るのが得意な方なのかなーって勝手に印象付けてます。そんな方のお名前が「飛鳥さん」って凄く素敵ですね。
 
あー…どうして急にこんな話をし出したのかと言うと、結局のところ「鳥」は籠に入って大人しくしている姿より、飛び立った瞬間こそが一番美しい生き物だと思うということと、田口さんはそんな鳥の姿に通づる部分があるということです。
「フライアウト」という曲名に感じるのもそんな鳥の羽ばたきの音ですね。
 
本来、鳥というのは上空に生息する生き物。
だから翼を広げて飛ぶ姿こそが一番美しいのだ、ということに、籠から鳥が逃げ出した今頃になって気づいた飼い主の愚かさを痛感したような、勢いのある楽曲でした。
 

溺れた王子の救い方 ―『ニライカナイ』を聴いた感想

楽曲レビューもいよいよ大詰めです。カタカナ6文字のラスト3曲に入ると何だかクライマックス感がありますね。

途中キーボードが故障したりして今月中に終わらせる目標は達成できませんでしたが、最後までやり遂げたいと思います。
いつもいいねしてくださる方々ありがとうございます。本日もお付き合いくださいませ。
 

ニライカナイ feat.しぇろ二期

▼Lyric&Music&Movie:しぇろ二期様

Arrange毛布様
Illustのをか様 
Vocal(ボカロ版):音街ウナ
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼アルバムに参加した感想は?ボカロPアンケート!

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.12 -ニライカナイ-

 

■田口さんによるレビュー

・「ニライカナイ」は沖縄の言い伝えで、「異世界の楽園」のような意味。最初はハワイとかそっちの方面の言葉を想像したが、意外にも日本由来の言葉だった。
・海中で宴が行われているようなシーンを想像させる。この表現の仕方に、しぇろ二期さんのファンタジックな表現力の豊かさを思わせる。
・曲自体はノリノリでギターサウンドもカッコよく、自然に跳ねてしまうようなメロディー。田口さんもお気に入りの楽曲で、アルバム内でも一、二を争うぐらい好きな曲。ライブで歌うのが楽しみ。
・ボカロVer.と田口さん歌唱Ver.でアレンジが大きく異なる。田口さん歌唱Ver.はギターが全面に押し出されているが、音街ウナが歌うボカロVer.はポップな印象の強い仕上がりとなっている。
・最初のデモを頂いた時はボカロVer.の曲調で頂いていて、レコーディングの直前にアレンジVer.が上がってきた。アレンジは毛布様。
ニライカナイのタグラブの収録日は偶然にもプライベートで海に行っていた。タグラブではその日の話を中心に語る。
 

■制作過程

・「転生・復活・再起・再生」をテーマに曲の制作を行ったしぇろ二期さん。
・かなり好き勝手に曲を書かせてもらって、楽しくやらせてもらった。人充てに曲を書き下ろしたのは初めてだったので新鮮で楽しかった。
・「バカをやるなら」「まっさかさまー」等、ポップな楽曲が印象的なボカロPさんだと公募の時から思ったので、そんな曲調をオーダーした。
 

■しぇろ二期さんのこと

・田口さんの楽曲提供を機に「しぇろ二期」に改名。
・ガヤ企画を実施中。
・他の楽曲で気になった曲は左手さんの「DIDA DIDA DIDA」。
 

■しぇろ二期さんのオススメ楽曲

▼バカをやるなら

 
▼まっさかさまー

 

■「ニライカナイ」における田口さんのパフォーマンス

・何といってもいつの間にか生まれていたギフト芸。「この曲が鳴ったらお魚ギフトを降らせる」というオタ芸が定着し、お魚シャワーが画面いっぱいになる曲になりました。今年はコロナ渦につき生でライブを見られる機会はほぼ無かったのですが、歓声の代わりにコメントで盛り上げるスタイルにファン一同慣れてしまい、お魚のギフトを大量に降らせることで彼へのエールを送るようになりました。ライブの「投げ銭」の大半はこの曲が占めているといっても過言ではない。
・以前、彼が「彗星ハネムーン」の魅力を語る際に「コメントの一体感」を挙げていたので、そこに一番近い演出ができているのがこの楽曲だなぁ、とライブの度に思います。セトリでいうと後半の畳みかけの盛り上がる部分で歌うことが多いかな。
・パフォーマンスとはちょっと違うけどこの曲をバックにしている時の彼は高確率で寿司の話をする。(週一回のニコ生トークの時)
 

■総括

この企画を通して初めて知ったボカロPさんですが、非常に楽曲制作スキルの高い方として印象的でした。
あれからTwitterもフォローしてますが昼夜逆転しがちな私と割と生活時間帯が近いので(特に早朝)いつも勝手に彼のツイートを楽しく拝見しております。先日はお誕生日おめでとうございました。
 
今回、制作過程のお話は対談もなくあまり詳しくは聞けなかったのですが、アルバムの中でもインパクトが強く初見さんの耳にも残りやすいファンタジックな仕上がりになっていた一曲でした。
田口さんにこんなに魚の名前を連呼させたのは間違いなくこの方だけだと思われます。(ご本人様のツイートより)
リアルな人間の感情をリリックに込めた楽曲が多い中、路地裏探訪と並ぶ「人ではない何か」が語り手となっているような、異世界感がある独特な雰囲気がありますね。
 
ニライカナイ」という言葉を聞くのは、私自身この楽曲を通して初めてとなります。
田口さんもタグラブでこの言葉について少しだけ解説をくださいましたが、改めてこの言葉の由来とか詳細を調べてみました。
 
 
沖縄は周囲を海に囲まれています。そのため自然の恩恵は基本的には海から授かります。
本州など陸続きの地域であれば、恩恵を授かるのは山かもしれません。しかし沖縄の場合は海なのです。海からは魚や貝など貴重な食材が得られます。
これらをただの食材として捉えるのではなく、遥か彼方にある神々の住む場所からの贈り物だと考えたのです。
その神々の住む島のことをニライカナイと呼びます。ニライカナイは暮らしの恵みをもたらしてくれる場所を指す言葉なのです。そして実際に沖縄にはニライカナイの神にまつわるお祭りがいくつもあります。
ニライカナイの概念は沖縄の文化を考える上では欠かせないものの一つなのです。
 
ニライカナイからもたらされる恵は食物や作物だけではありません。実は魂にも関係しています。これから生まれてくる子供の魂、それもニライカナイからやってくるという考えもあるからです。
そしてそのその魂が宿った人間が死亡した時に帰る場所もニライカナイだとされています。死者の魂は、天に昇っていくのではなくニライカナイに帰っていくという考えが残されているのです。
 
琉球王国時代及び、沖縄の一部地域では死者の魂について、東京や大阪など世間一般の魂とは異なる考え方があります。
現代日本の一般常識は西洋の唯物主義そのものです。神道八百万の神々をオカルトとして否定するのが一般的です。魂の存在を全く無視した教育や経済発展が行われています。
しかし琉球王国時代の考え方は唯物主義ではありません。肉体が滅んでも魂が残ることは現代とは真逆の常識だったのです。実際に琉球王国では死者の魂はニライカナイに一度は去る、とされていながらもその存在がそれで終わるものではありませんでした。
7代後になれば守護神になるという考え方が存在していたのです。これはつまりどういうことかといえば、ニライカナイは魂が生まれ変わる場所だということです。ただの死者の魂が守護神へと生まれ変わる。ニライカナイはそういった神聖な場所でもあるのです。

 
そ、そんな奥の深い言葉なのか…
情報量の多い文章の中から上記を抜粋していますが、要はニライカナイとは神々の住む場所であり、死者の魂が帰還して生まれ変わるという神聖な場所を指しているようです。
「すべての生命は海から」「死んだら海へ還して」と他の小説や楽曲で聴いたことがあるような気もしますが、「転生・復活・再起・再生」というこの曲のテーマが綺麗にリンクしていますね。
次の人生へ踏み出せばそれで良いよ」「来世の貴方を僕に見せてくれよ」という歌詞は言わずもがな、「もう一度」という歌詞に合わせて「再生」の文字が表示される演出がなんとも憎いです。
この時に活動再開した彼へのエールに聞こえなくもないところが、ファンタジックな曲調ながらもリアルなメッセージ性を感じます。
 
ライブでこの曲が流れるといつも魚のコメントやギフトが大量に流れ、そこに「人魚」の姿も現れます。
皆が良く知る物語の「人魚姫」は溺れた王子を陸に引き上げますが、この曲の人魚は海に沈んだ彼を敢えて「溺れて良いよ」と楽園へ引き込み、労うように魚たちと踊った後で、来世でまた出会えるように約束を交わしているような情景が浮かびます。
「二人は来世で再び出会い結ばれる」というのが、もしかするとあの物語のトゥルーエンドかもしれないな…と飛躍した想像ができるような、ストーリー性の高い楽曲でした。
 

夏の終わりにはただ貴方に会いたくなるの ―Live in JT Home vol.9の感想

Live in JT Home vol.9の配信を見ました。

今回はお仕事でリアタイできず、アーカイブ視聴。また再生しながらレポ書いてみます。
どうぞお気軽に閲覧くださいませ。
※未視聴の方はネタバレにご注意ください。
 
 

Never Lose My Vibe

・例の如く最初からガシガシ踊る曲で来たな…と思った。
・今日は全体的にラフで緩い感じの衣装。半袖で薄手の素材で前回よりだいぶ涼しそう。
 オーバーサイズだからダンスもいつもより柔軟性高かった気がする。
・ダイヤモンドフェスではラストの曲だったからあの時は「最後の力を振り絞る」ような感じだったのに対し、今回は一発目なので表情にも動きにも若干の余裕が見える。
・それほどガチガチに固めてないのか、激しい動きで乱れていくヘアセット。
 この間美容室行ってた割にあんまり長さ変わってない。毛先を軽く整える程度だったのかな?
・何度見ても難解な振り付け。でも田口さん好きだろうなっていうのは踊っているときの表情でわかる。
・「バイブス」という言葉を田口さんもよく使うけど、「Vibe」は一般的には「その場の雰囲気」という意味で、別の意味としては「感情」でもある。この曲名の訳として一番しっくりくるのは「感情を失うな」なのかなってリリックから感じる。
 

Hold Us Down

・最早ライブでは毎度お馴染みの曲になってきた。配信ライブでは皆勤賞なんじゃないだろうか。
・でもイントロが流れたらその度ワクワクせずにはいられない。いつか配信じゃなくて生でこのパフォーマンスを見られるときは一発目に見たさある。
・サビの振り付けはもう田口ファンは全員覚えたと思う。ミュートで見たとしてもこの曲だってわかるよ。
・同じ曲と同じ振付でも衣装やカメラワークによって見え方が違うのが面白い。今回は引きの映像が比較的多かった気がするので、ダンスの全体像がよく見えた。
「自分を抑える」って意味の曲名だけどリリックや振り付けには全く真逆なものを感じる。他の意味もあるのかな。
 

MC

・前回の8月に続き、1か月ぶりの月イチ配信ライブ。配信ライブ独特のリラックスできる空気を楽しんでほしい、と田口さんの挨拶。今日は画面外からの拍手が聞こえるけど、ゲストさんかな?スタッフさんかな?
・今日は「夏の名残」をイメージしてアガる曲を冒頭に持ってきた。
・恒例の乾杯コーナー。今日は田口さんは水で乾杯。
 田口「前回ノンアルコールビールでいったけど、炭酸がキツくてw」
 3月が本アルコールビールだったことを考えるとどんどんシンプルになっていく田口さんの飲み物。
・「乾杯!」から今日はシャンパンタワーができるレベルのギフトが降ってくる。
 結構見たことない名前の方がいたような。
・今日も田口さんの手書き色紙のプレゼント企画あり。
 今回は緑色のフォントで書いて、何気にサムネのフォントもそうなってるっていう芸の細かさ。
・ギフト上位10名にはミニ色紙プレゼント。
・今回もコスモシティとジュウゴノシンゾウの楽曲で作った特別なセトリ。
 

Atmosphere

・この曲久しぶりじゃない!?って思ったら6月のライブでも歌ってた。ジュウゴノシンゾウの楽曲に比べて圧倒的に横文字タイトルが多いアルバムなので、実はスペルが分からなくて調べた。「Atmosphere」の意味は「大気」。コスモシティの楽曲はアルバムタイトル通り宇宙に関するワードで出来ている。
・背景の映像にもどことなく地球の大気を思わせるCGが流れてる。ドライアイスか何か使っているようなスモークも出てくる。
・画面越しに手を握られたり指先の感覚を感じる人多数。
 

No limit

・ライブで聴いたの初めて?久しぶり?分からないけどどの道珍しいセトリ。
・ここでおそらくお初の方からコメントが来る。そして優しいファンの方々がコスモシティの訴求。ボカロ界隈か踊り手界隈かその他の方か分からないけど「今度購入します」と嬉しい返信。田口さん良かったねぇ!
・DAZZさんを求めるコメント多いけどこの曲のコラボ相手はSNEEEZZEさん。
・曲の終わりに田口さんのコメントあり。珍しい。
 田口「皆もさ、『できないかも』とか『辛いな』とか思って諦めちゃったりすることあるかと思うけど、そこで頑張って自分の壁を越えて、できた時には凄い達成感があるから。行先は『No limit』で行こう」
「No limit」の意味は「限界はない」
 

MC

・今回のライブしか見に来られない方もいると思うので、手を抜いたりはしたくないし見てくれた一人一人に満足してもらえるようなパフォーマンスを心がけている。
・凄い感動的なことを言ってくれてるけど何故か降ってくるのは栗のギフト。
 田口「今日は栗さんなの?」(さんつけてるの可愛い)
・今日は夏にやり残したことをテーマに作っているけど、秋という季節も凄く好き。
 

色紙争奪ジャンケン大会

・今日はゲストもこの後来るので早めにジャンケン大会。
・私は後追い組につき参加できず。これがアーカイブ視聴の悔しいところ。
・今日は蒸し暑い、って言ってるけど多分それは貴方が動き過ぎなんだと思うw
・負けた人に「ごめんねぇ…」って言ってるところに彼の優しさが出ちゃってて好き。
・ここでも画面外からの拍手が聞こえる。
・折角のプレゼントだから、とせっせかせっせか書いているという田口さん。可愛い。
 

サタデーナイトクルージング

・土曜日の夜にやっとこの曲が聴けた。スタンドマイク出てきたときはMiss youかと思った。
訳すとすれば「土曜の夜の旅」かな。会社員としては休日出勤した日の帰り道の怠くも心地よい車内の空気を感じる。
・前回はジュウゴノシンゾウLIVEだったから、涼し気でラフな服装で歌っていると曲の雰囲気を感じられて良い。
・見ながら歌ってたけど息継ぎ難しすぎた。サラッと聴ける曲だけど元がボカロなので実は難易度高い曲なんです。カラオケで歌ってみると分かるよ。
・コメントでも流れてるけどドライブの助手席に座りたくなる曲。なんか今回のライブは前半この手の疑似恋愛できる曲多いですね。皆さんコメントで浸ってて笑う。
 

Lofty Dream

・これも久しぶりだ。今回前半はコスモシティで攻めますなあ。
・この楽曲もまた「自分が相手だと妄想できる歌」なんです。へへ…
「Lofty Dream」の意味は「高嶺の花」。へぇ、そうなんだ、って初めて聴いた時は思ったなあ。
 直訳は「高尚な夢」だけど、手の届かない存在って意味でそういう言葉に変換されるのかな。
・伸びた髪とラフな服装からか大人の男の色気のようなものを歌っている姿から感じる。
・途中でスタンドマイクからマイクを外して、スタンドを抱くような魅せ方がズルい。画面上の皆さん全員抱かれてる。
 

MC

・「サタデーナイトクルージング」と「Lofty Dream」を繋げて歌ったことは今までなかった。
 夏の終わりの侘しさや寂しさが割と嫌いじゃなくて、一緒に過ごした夏が過ぎていって、寂しい季節になる時のほろ苦さをこのセトリで表現できればと思った。この2曲は相手を想う気持ちという部分が似通っている。
 田口「自分のちょっと前のこととか色々考えながら歌ってみたけど、皆さんにはどんな風に伝わったでしょうか?」
 確かに大人の恋愛を前面に押し出した2曲を繋げてきたなって思った。ちょっと前、って意味深なこと言ってた田口さんに最近何かあったの?と色々勝手に想像した。
・今は新曲の制作をしている。8月はライブが多く、9月に入ってからは制作でドタバタしている。この間は遅い夏休みをようやく満喫できた。今年は本当に頑張った夏だと思うので、秋冬にかけて皆に披露できると嬉しい。
 

スクショタイム

・今回は割とフリーに進める。いつも通り皆スクショに夢中でコメントが見事にピタッと止む。
・最近TicTokを始めた話。TicTokの発音が相変わらずズレてて可愛い。
「横顔見せて」・・・ナイスリクエスト。美しい横顔はちょうどジュウゴノシンゾウのジャケ写と同じ角度。
「見下ろして」・・・座った体勢では上手くできない。多分これじゃないと田口さん本人も察して爆笑。
「振り返って」・・・「この角度広末涼子さんよね」自覚あったのか!うんうん似てるよ。
「髪かき上げて」・・・前回は「セットが崩れる」ってやってくれなかったけど今回はやってくれた。良い。
「鼻を触って」・・・謎リクエスト。悪くないけど多分そうじゃない。
・今日は割と無難でいい感じのリクエストとアクションだった。後でスクショしよう。
 

路地裏探訪(Dance with えとう)

・皆さん興奮のあまりギフトで画面が埋まって見えない。
・可愛い可愛いえとうちゃんはコメントでも大人気。動画の頃よりだいぶ身体が絞れてる気がする。
 紫色の髪色が映えてて素敵。残念ながらマスクオフのお顔は見られず。
・えとうさんが7割作った振付は本当に作り込まれててカッコイイし可愛い。
・動画と同じく田口さんとミクさんのデュエット音源でパフォーマンス。
・ノーカットのライブVer.でも動画に劣らないシンクロぶり。
 

Dance Time

・しょまとがんそさんが合流して4人でのダンスパフォーマンス。
・どこかで聴いたことがある曲だと思ったら、もしやDIMENSIONSライブでMomentsの4人が魅せていたダンス?全員10代のあの子達とは違う大人の空気感漂うコラボ。
 

タイニーバニー(Dance with しょまとがんそ)

・初めてステージで見るダンス。全員スーツでキメていたあの動画もいいけど、割とラフな服装で踊ってるのも良いね。
・センターポジションのフォーメーションが所々で交代するのが良い。
・前に田口さんがTwitterに上げてた「仕込み中」の動画は2番Aメロのところからですね。動画じゃよく分からなかったけどこうやってライブで全体像を見るとよく分かる。
「タイニーバニー」の意味は「小さなウサギ」なので、皆さんニンジンのコメントやらギフトを贈る。実はリアタイできない私がライブの少し前にTwitterで呟いていた内容でもあるので、もしかするとその意思を受け取ってくれた方がいるのかもしれないと思うと嬉しかった。アーカイブ見た田口さん笑っただろうな。
・「間違ったまま、苦しいままに行くしかない」という歌詞が妙に刺さるよ…
 

MC

・今日はゲスト登場という今までにない試みなので、ゲストを交えてのMC。嬉しすぎる。
・ライブで披露するのは2曲とも初めて。3人にコメントを求める田口さん。
 3人とも「ミスりませんでした!」というコメント。MC慣れしてない感が微笑ましい。
・「踊ってみた」の反響についてえとうさんに質問。
 えとうさん「何で田口さんと踊ってるの!?って周りの友人に驚かれました!」
・えとうさんには振り付けのお仕事なんかも今後お願いできると嬉しい。踊り手が知り合いにいる方にも是非えとうさんとのコラボをオススメして欲しい。
・がんそさんはゲーム再現の動画がTwitterで2000万再生越え。(凄い…)
 しょまとがんそさんの喋るタイミングが高確率でハモってるの可愛い。
・「タイニーバニー」の撮影は早朝から行って大変だった。早朝とはいえ人がかなり通っていたので、田口さんの姿に気付いた人が結構カメラで撮ったり見てたりした。でもそれを本人に言うと、「それがまた良いよね!」と言ってたのがカッコイイと思った、としょまさん。
・折角なのでえとうさんやしょまとがんそさんに質問を…と画面上のコメント勢に促す田口さん。そんな田口さんの後ろではしゃいでいる3人。ノリが良くて好き。
 田口「すぐにふざけたがるよね、君たちはねw」
・ライブ本番前に田口さんのTikTokを開設した。えとうさんとしょまさんと一緒にダンス。
・3人の年齢について質問が上がるも、「年齢は非公表です!」
・えとうさん、しょまとがんそさんとは「ボカロJUNction」で共演する予定だった。(コロナの影響により延期中)初対面もその打合せの時。
 がんそさん「オーラが凄すぎて人間としての常識を忘れた」
 しょまさん「エレベーターの下で二人でソワソワしてた」
 えとうさん「エレベーターの下でソワソワしているお二人に会った。初対面の時は全然何も喋れなかった」
・3人の年齢は非公表だけど、一応この中では田口さんが一番年上。こんなこと言ったら失礼だけど、3人ともすごく可愛くて自分がお兄さんでいられる、と田口さん。そのコメントを聞いて「いやぁ~」と照れるようなポーズを後ろで揃ってする3人。なんて可愛いの。
 田口「おいwすぐボケようとするんだからw」
・今後もYoutubeやボカロJUNctionで3人とは共演していきたい。
 

ニライカナイ

・もうライブでは外せない曲となりつつある。投げ銭の大半をこの曲が占めているといっても過言ではない。
・いつも通り無数の魚ギフトが降ってくる。このギフト芸を生み出した田口さん、ファンの皆さん、そして作曲者のしぇろ二期さん凄い。お初の方も何となく流れに乗ってお魚降らせられるんじゃないかな。
・今回もギフトの重さで画面がカクカクするけどその感じすら楽しい。お魚ギフトだけでは飽き足らず人魚を召喚する方も。
ニライカナイ」の意味は「沖縄地方で海のかなたや海底にあると信じられる理想郷」の名称
・「晩夏」がテーマになってそうな今回のライブのラスト付近に持ってきたのも頷ける。
 

閉花予想

・ライブで歌うの久しぶり、といってもジュウゴノシンゾウLIVE以来か。
・ここでお魚祭りから桜祭りに切り替わるコメント。画面上に桜吹雪が舞う。
・キーも歌いやすいし歌詞も覚えやすいので、画面上で見ながら思わず歌詞を口ずさんでいた。
・これはどちらかというと春の歌だけど、終わりに近づいているときという意味では晩夏の切なさに近い部分があるのかな、と歌詞を聞きながら思った。
この曲のタイトルは「開花予想」ではなく「閉花予想」です。お初の方はお間違えの無いよう!
 

ペタルダンス

・この曲のイントロが鳴ると終わってしまうんだなということを感じて切なくなる。
・何度聴いても歌詞が心に染みる。アーカイブを見ながら一緒に歌ってた。
・この曲で花束を降らせたり、アフロディーテを召喚する方々は歌詞の意味をよく理解して聴いているということが伝わってくる。
「ペタル」は「花びら」、「ダンス」は「踊る」。この楽曲のイラストを描いた方のコメントは「花弁が美しく散るのは、美しく咲いたから」。
・バックの照明の光が彼の横顔を照らす演出に感動を覚える。
 

MC

・ライブは本当にあっという間、でも一回やるごとに自分の心に刻まれるような、一度限りのライブを全うできたと思えるような配信をできたと思う。いつも協力してくださるミナモトビジョンさんにも感謝。
・この時点で「アンコール」のコメントが流れる。
・10月にはZoomファンミーティングと、第4土曜日にはまた月イチライブを開催する予定。詳しい日程はまだ立てられていない。ファンクラブ会報は早ければ今月中にデジタルで公開予定。色々と予定があってファンは幸せです。
・今日からTikTokを開設。えとうちゃんとしょまくんが手取り足取りTikTokについて色々教えてくれた。
 田口「何で今までやってなかったんだろうって」
・コメントのアンコールに応えてアンコールも準備万端。
 

フライアウト(アンコール)

・前回の月イチライブでは一発目だったこの曲が、今回はラスト!ダイヤモンドフェスにも選ばれてた一曲だったし、本当に大好きな曲なんだろうな。
・今まであまり歌ってなかったロック調の曲。でも、回を重ねるごとに歌声も安定して、自分の曲にしていってる感じがする。難しい歌詞だけど私も自然と覚えてて、配信を見ながら一緒に歌っていた。
・いつか生のステージでこの曲を全力で歌う彼を見たい。
「フライアウト」の意味は「飛び立つ」。MVのイラストで手錠と足枷を千切って飛び立っている女の子の姿が印象的。歌詞以上に曲名に作者の思いが現れてる曲だと思う。
 

■総括

ライブ三昧で忙しかった8月からすると、9月は割とのんびりと「遅めの夏休み」を過ごせたのではないかな、と彼のインスタやTwitterを見てると思います。
それでも定点で必ずファンが喜べるイベントを用意してくれるので、退屈せずに楽しく過ごせた9月でした。表立った活動は無くても、制作とかレコーディングを行っていることは所々でチラ見せしてくれましたね。今年が終わるまで楽しませてもらえそうです。
 
今回のテーマは、明確には語っていませんでしたが個人的には「晩夏」なのかなぁと思いました。
最初の2曲は夏の楽しさを感じるようなアガる曲で始まりましたが、その後は全体的に「夏の終わり」を意識した切ないセトリになっていたような。衣装もゲストさん含めラフな服装でやってた印象です。夏の終わりというとどちらかというと前回の8月末の方がそうなのかもしれませんが、今年は気候的にも田口さんのスケジュール的にも9月の終わりこそが「晩夏」だったのかもしれないですね。
 
このライブのレポを書くとき、何故か自然と各楽曲の曲名の意味を考えていました。
先日にTwitterで田口さんがリプ返大会を行っていた際、「歌詞の意味を身体全体で感じ取ること」を意識しているといったコメントをしていたのを見て、見る側である私もそこを考えようと少し思ったんですよね。
そこを理解しているかしていないかで彼のパフォーマンスの受け取り方も変わってくるので、今回のライブで田口さんのアルバムを初めて購入されるという方にも、是非歌詞を噛みしめながらじっくり聴いていただけると嬉しいなぁと。彼は所謂クリエイターではなくパフォーマーですが、作り手が込めた歌への思いを意識したパフォーマンスこそが最大の魅力です!
 
9月は結構遅めの夏休みを満喫したようですが、ちょうどつい先ほどのツイートからすると、今日からまたカロリー制限始めたりして再びストイックな生活に戻っていくようですね。あまり無理せずに頑張って頂きたいものです。
 
このライブや他の場所でも呟いていた「制作」とか「今はまだ言えないこと」とか、それらの伏線の答え合わせができる秋冬を楽しみにしています。
どうぞ充実した秋をお過ごしくださいませ。今回もお疲れさまでした。
 

こんな時代だった、といつか語れる日まで ―『Cc:京都遊郭にて、空蝉。』を聴いた感想

昨日のライブ最高でしたね。リアタイできませんでしたが後追いでバッチリ見ました。

しかしライブレポはもう少し余韻に浸ってから書きたいので、キーボード故障につき中断していたこちらのレビューを先に上げたいと思います。
どうぞお気軽に…って長さじゃないかもしれない今回。
 

■Cc:京都遊郭にて、空蝉。 feat.水彩画P

▼Lyric&Music&Movie:水彩画P様

▼Bass:ふぁみ。様

Illust(ボカロ版):フォーティーン様
Costume(実写版):ACUOD by CHANU様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(shino×水彩画P× 田口淳之介 

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.11 -Cc:京都遊郭にて、空蝉。-

 

■田口さんによるレビュー

・「空蝉」とは蝉の抜け殻とのこと。しかし、遡ると源氏物語の「現人」が訛ったもの。この世に生きている人間のことをいう。
・海外に向けての配信サービスの為に各楽曲の英語版タイトルを考えたが、「空蝉」だけは訳せなかった。曲名の訳は「Cc:At the red light district of Kyoto, “UTSUSEMI”」となる。
・「Cc」の本来の読み方は「カーボンコピー」。メールを共有する相手等を指す言葉。自分たちの世界を周りの人もガンガン見て欲しいという遠隔な意味を含んでいる。
・水彩画Pさんの今までの楽曲はアルファベットとカナ文字で連動している。
 「アンビグラムな恋心(A)」→「botan(B)」→「Cc:京都遊郭にて、空蝉。(C)」
・聴きどころとしては日本語独特の美しさ。古典的で情緒溢れる歌詞になっている。
・京都の風情のある雰囲気が全体的に出ている。夜の先斗町辺りの落ち着いた情景を感じ取れる。
・この楽曲には時代設定があるという水彩画Pさん。田口さんの実写MVは過去の遊郭をイメージしたもの、ボカロ版は現代の京都のイメージを描いている。
・水彩画Pさんの楽曲「botan」は、この楽曲のアンサーソング
遊郭の女性が感じる愛の形を、女性目線で語ったようなリリックになっている。
・田口さんVer.のMVに出てくる言葉は「他愛」と「深愛」。遊郭には「その場所だけでの泡沫の時」みたいなものがあり、その中にある想いを「白粉で隠した」ような女性の気持ちを描いた切ない歌。大和撫子特有の奥ゆかしさが表現されている。
・ボカロVer.のMVに出てくる言葉は「牡丹」。牡丹の花言葉は「誠実さ」「恥じらい」「富貴」。そこから水彩画Pさんの以前の楽曲「botan」に繋がる。
・考察ができる曲。日本人らしい奥深さを曲を通して感じて欲しい。
 

■制作過程

・水彩画Pさんは公募による参加。
・一番最初に水彩画Pさんにお会いした瞬間、「この人とはフィーリングが合う!」と確信した田口さん。会ったその日からボカロについて凄く話し込めた。ボカロに可能性を見出すきっかけ、やりたいことを話していくうちに、みるみるレゴが積んでいかれるように話が重なり、結果ボカロJUNctionの立ち上げに至った。
・その経緯で出会ったのがベース奏者のふぁみ。さん。ベースで楽曲に参加して頂けることになった。水彩画Pさんの出会いからボカロ界隈の方との出会いが一気に広がった。(今回、この楽曲に携わった水彩画Pさん、ふぁみ。さん、フォーティーンさんが全員チャットに参加)
・ふぁみ。さんのベースは躍動感がある。田口さん自身も学生時代にベースを弾いていたが本当に難しい。フレットもデカいし弦も太いので、独学であんなに動かせるのは凄い。
 田口「あんなに楽しそうにベース弾く人がいるんだ、って」
・田口さんVer.のMVは水彩画Pさんのアトリエで二人で一緒に撮影した。水彩画PさんのTwitterティーザー動画あり。
 田口「俺がラーメンの話してる途中に曲始まるっていうw」
 水彩画Pさん「フルでアップしたいですね、ラーメンのくだり」
・動画編集も水彩画Pさんが担当。京都の町並みのストリートビューや制作中のリモート動画も出てくる。コロナによる自粛の時期でもあったので、敢えてその現代の雰囲気感を出そうと思った。実は撮影しようと京都までドライブしようと思っていた水彩画Pさん。(しかし自粛中につき実現ならず)
・ボカロVer.のイラストを担当したのはフォーティーンさん。看板のネオン感に現代の京都の雰囲気が出ている。フォーティーンさんは洋服のレース感等細かいディティールに味があり、女性を描くのが上手い。背景の看板にリリックが出てくるMVとなっている。
 水彩画Pさん「実写編集より大変でしたね、、、」
・水彩画Pさんとふぁみ。ちゃんとはライブで共演したい。(実現しましたね…)
 ふぁみ。さん「水彩画さんとスラップ対決ですね!笑笑」
 水彩画Pさん「おお!いいですね、フォーティーンさんドラム叩けます?」
 フォーティーンさん「楽器は全然です!!ww」
 (このチャット会話面白過ぎた。フォーティーンさん巻き込み事故
・こんなに才能溢れる人たちとプロジェクトを通して出会えたのが本当に嬉しい。
 田口「凄い人集まっちゃいましたよ」
 水彩画Pさん「田口くんの人柄あってからこその話ですよ」(私もそう思いますよ)
 

■水彩画Pさんのこと

・ボカロPデビューしてからまだ1年程。だいぶ謎に包まれている人。ボカロ自体は10年程前から聴いていたものの、最近になってやっと重い腰を上げた。
 水彩画Pさん「お手柔らかにお願いします」
・ボカロを使って音楽を作ろうと思った理由は「ボーカロイドは裏切らない」から。初音ミクのようなバーチャルの存在と混在するような世界を表現したい。
・最近はコロナ渦により、世界の音楽シーンがリモートに切り替わっている。でも、ボーカロイドは元々リモートスタイルなので、他のジャンルより一つ先に行っていたのだと思う。
・基本的に日本のポップスが好き。ちょっと懐かしいメロディーを意識している。
・「アンビグラムな恋心」は処女作にしてニコニコ動画の再生数10万越え。好きな曲を出していこうと思っているだけだが、聴いてくれる方が多いのは嬉しい。
 (自分の意思を主張しつつ、田口さんの質問の意図も決して否定はしないところがいいですね)
・イラストをコンセプトにして活動している方々と出会えるのがボカロPの活動での面白さ。
・ギタープレイがとにかく超絶すごい。水彩画Pさんのチャンネルを見た時に田口さんが真っ先に気に入ったのは「botan」。そして、「乙女解剖」のギターカバーに衝撃を受けて、この人なら良い曲を作ってくれると思った。
・制作にあたって、田口さんに「どういう顔でお会いしたらいいんだろう」と思った水彩画Pさん。でも田口さん曰く実際会うとイメージとはだいぶ離れていたらしい。トリコロールカラーの派手なジャージで来られた。
 田口「めっちゃ派手だったw」
・音楽に対しての思いや経歴を水彩画Pさんに聞いてみると、すごく頼りになると感じた。
・水彩画Pさんは西日本の出身の方。基本的に西日本の方とは感覚が合うので直感で話が合うと感じた田口さん。
・制作以外でも、ボカロJUNctionの方に注力していて水彩画Pさんと一緒に時間を過ごすことが多かった。グッズの制作会社やYAMAHAさんへの挨拶にも一緒に行ってもらい、密な感じだった。
 水彩画Pさん「今年一番会ったんじゃないかなw」
 田口「俺もそう思うw」
 水彩画Pさん「週7で会ってましたねええ」
・他の楽曲で気になった曲はオゾンさんの「What Color」。
 水彩画Pさん「ボカロJUNction繋がりで唯一お会いした相手なので、どんな楽曲にするか気になっていた」
 

■水彩画Pさんのオススメ楽曲

アンビグラムな恋心


▼botan

 

■「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」における田口さんのパフォーマンス

・MVがジュウゴノシンゾウ唯一の実写映像なので、この時点で田口さんのパフォーマンスが見られます。カメラアピールと共に即興の日舞のような振付が入っています。多分、花魁のイメージじゃないかな。現代の映像だし衣装もCHANUさんの洋装なのに、どこか前時代的で和の空気を感じます。赤紫が映える衣装は、意識したかどうか分からないけど「牡丹」のイメージなのかなと。
・普段、機材とかカメラマンとか演出家とか色々備わった環境でMVを撮っていた田口さんにとって、個人のアトリエでたった二人で撮るMV撮影は凄く新鮮で面白かったんじゃないかと想像できます。
・ジュウゴノシンゾウLIVEでは水彩画Pさんはバンドマスター、ふぁみ。さんはベーシストとして出演。また、ボカロ版絵師のフォーティーンさんも現場に観に来てくださっていました。チームCc京都勢揃い。
・作者(水彩画Pさん)と奏者(ふぁみ。さん)と演者(田口さん)が同じ画面上で、しかも生でのパフォーマンスをする姿と言うのはやっぱり熱いものがありましたね。水彩画Pさんはこの曲になって初めてステージに登場されるのですが、そこから全体がグッと引き締まった感じがしました。2番のサビで田口さんと水彩画Pさんの2ショットが抜かれた時は、作者(クリエイター)と演者(パフォーマー)が揃って改めて曲として完成したような不思議な感覚でした。
・その後もチームCc京都の繋がりは続いているようで、皆様田口さんのダイヤモンドフェスを見に来てくださったとか。水彩画Pさんとも一緒にギターを買いに行ったり新しいメロディーを生み出したりと、良い関係のようです。一回の共演で終わらない繋がりをこれからも大事にして頂きたいですね。
 

■総括

曲自体の濃度も去ることながら、制作過程の厚みとか各方面との繋がりが強すぎて、全体的にボリュームのあるレビューになるだろうなとは思っていました。水彩画Pさんも凄い人ですけど、その人を150人から引き当てた田口さんも凄いよなぁ。
今も水面下で色々動いているようなので、それが表に出てくる日を心待ちにしております。
 
さて、肝心の楽曲についてですが、これはかなり考察に時間を要する難しい曲ですね。
使用されている言葉は全て調べないと意味が把握できないものなので、歌詞を読み解くのにはちょっとやそっとの想像力では事足らないものがあります。
とりあえず、MVの中でフォーカスを当てられていた言葉について考えてみます。
 
 
他愛【読み】タアイ
他人の幸福を願うこと。
 
深愛【読み】シンアイ
心から深く愛すること。
 
牡丹【読み】ボタン
春の花。富貴。誠実。
 
空蝉【読み】ウツセミ
蝉の抜け殻。現身。
(楽曲MVから抜粋)

 …ちょっと難しすぎるというか、深すぎてこれだけでは世界観をなかなか想像できないですね。

でも、曲のタイトルでもある「空蝉」は聞き慣れないながらもちょっと気になる言葉ですのでもうちょっと深堀してみましょうか。
 
 
そもそも「空蝉」とは、「うつしおみ」が「うつそみ」を経て音変化した歌語。もとはこの世に姿を現した人の意味。平安時代にはこの世ははかないという思想と結びついて、蝉の抜け殻や単に蝉のことを指す。

「空蝉」は「現人」が訛ったもの、ということを知った時は「どうしてそうなったの?」と思いましたが、この世は儚いという思想からのものだと思えば少し納得できる気がしますね。

ニュアンスから感じ取ると、「羽ばたけぬ運命」という言葉にはこの場だけの泡沫の時というか、昇華されない儚い恋心が含まれているのではないかと思います。しかし、「儚い」という共通点から「この世に現に生きている人」と「蝉の抜け殻」が「空蝉」という一つの言葉に宿るって、日本語というのは実に不思議な言語ですな。
 
でも、そんな儚い思いも「botan」という楽曲に繋がり、どのようにその気持ちが咲いたのかを表現されています。
MVの中の少女が持っている花は「白い菊」から「赤い菊」に変わります。
曲名は「牡丹」なのに歌詞にあるのは「菊」という不思議。
田口さんがタグラブで牡丹の花言葉について語っておられた通り、牡丹の花言葉は「誠実」や「富貴」ですが、この花は色によって花言葉の意味が異なるものではありません。
対して、菊の花の花言葉というのは色によって少々意味を変えていくものなので、少女が手にしている花が色を変えていくのは思いの移り変わりを表現しているものだと思われます。
 
 
――白い菊の花言葉は、「真実」「あなたを慕う」「誠実な心」。
英語でも「Truth(真実)」。
縁起のいい花言葉が並ぶ白い菊は、結婚式のブーケや装花の一部として使われることもあります。
また、仏花や献花に使われるなど、思いやりや慎みの心を表す花として使われています。
 
――赤い菊の花言葉は、日本語でも英語でも「あなたを愛しています」「I Love You(あなたを愛しています)」と情熱的なもの。
バラの花束を贈るのはちょっと照れ臭いというあなたは、赤い菊を恋人にプレゼントしてみるのもいいですね。
 

成程、白い菊から赤い菊への心の移り変わりは、「他愛」から「深愛」への移り変わりと少しリンクしているような気もします。真白な誠実な思いに少しずつ色づいていった結果が、情熱的な深愛に変わったというようなイメージでしょうか。

一朝一夕で理解するには非常に難しい歌詞ですが、聴き手の思うがままに考察するにはとても興味深く、何度でも聞きたいと思える楽曲です。
 
曲の解釈はここで完結させるのは難しい部分がありますが、今回の楽曲を含め水彩画Pさんの曲に強く感じたのは、時代背景をリリックやメロディーに強く反映させているというスタイルです。
実写版とボカロ版で魅せた過去と現代の京都、「空蝉」という言葉が持つ二つの意味、現代では使わなくなった美しい日本古来の言葉。どれを取ってもそれぞれの時代を深く感じさせるような言葉遊びや映像だと思います。
同じプロジェクトに参加されたR Sound Designさんは「時代を反映させ過ぎて色あせてしまう言葉を使わないようにしている」とのことでしたが、水彩画Pさんは敢えてその時代を深く感じさせる要素を楽曲に取り入れているような印象があるんですよね。(またそのRさんが水彩画Pさんの楽曲を「気になる曲」として挙げていたのも面白い)
時代の変化によって色褪せない音楽と言うのも勿論素敵ですが、数年後、数十年後に聞いた時に「ああ、そういう時代だったな」と感じるような要素も、曲の持つパワーであると私は思います。(所謂懐メロ)
 
実写版のMVには、水彩画Pさんと田口さんとふぁみ。さんがリモートで制作している様子が途中に織り込まれています。
ティーザーで「この映像がどう入ってくるのか…」と田口さんが仰っていますが、水彩画Pさんが敢えてこの映像をMVに入れたかった理由も「その時代を反映した映像制作」という目的であれば理解できます。
今、世界中がコロナ禍という未曽有の事態に陥っていますが、この事態も数年後には「そんなこともあったね」と語られる時が来るのではないかと。未来がどうなっているのか、それがいつの話になるのかは全く予測がつきませんが、この決して良いとは言えない状況も「懐かしい思い出」としていつか話せる時が来たら、この楽曲や映像もその中の一つになると信じています。
たくさんの人が苦しみ悩んだこの時代を「良かった」なんて言うことはこの先決してないとは思うんですが、音楽シーンにおいて配信がメインになったり、遠隔で制作するようなスタイルというのは「それはそれで良かったかもね」と言える部分もあるように思います。月に一回気軽にライブを見れるというのも配信ならではだしね。自粛ムードは不便ではありますが、通信が発達した時代であったというのは不幸中の幸いではないでしょうか。
 
「この曲で初めて水彩画Pさんと共同制作したんだよね」「この時の月イチライブは楽しかったよね」と、いつか皆で懐かしむ時が来るかもしれない。
そんな未来への希望を感じた、思い出深い楽曲でした。
 

神の無償の愛 ―『stay with me』を聴いた感想

休み明けのお仕事はやっぱり怠いですねぇ。

でも今週末はお楽しみがあるのでそれを励みに頑張ってます。
できれば今月中に全曲分レビュー上げたいので今日も書きます。
お気軽にお読みくださいませ。
 

■stay with me feat.平田義久

▼Lyric&Music:平田義久様 

Gt&Baimie様
Illustpasoputi様
Vocal(ボカロ版):初音ミク & 闇音レンリ
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(平田義久 × 左手 × 田口淳之介

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.10 -stay with me-

 

■田口さんによるレビュー

・ジュウゴノシンゾウ全14曲の中で唯一のデュエット曲。
・曲のリリックのイメージは、田口さんの恋愛観を平田さんに投影して頂いたもの。最初にリリックを含めたデモを頂いたが、田口さん自身の想いをもっと込めたものにしたいというディレクションをした。
 平田さん「田口さんから『もっと情熱的な歌詞にして欲しい』と希望があり、ちょっと分からないなと思った部分があったので、ご自身の過去の事や今の想いについて独自にヒアリングをさせて頂きました」
・支えてくれる大切な人と一緒に進んで行くという田口さんの想いを平田さんが歌詞に込めた。
・恋愛において、お互い傷つけあったりすることもあるし、支配や抑圧に駆られることもあるが、お互いに全てを許し、認め合い、受け入れ、癒し合うことが田口さんの中での理想の愛の形である。平田さんがその思いを上手くリリックに書き起こしてくれたと思う。
・MVのイラストはmellowシリーズ特有のものだが、ちょっと「田口さんっぽい」という感想を抱いた人が多い。
・MVのラストの一文として、「フォレスト・ガンプ」の一節が表示されている。
 「人生はチョコレートの箱みたい。開けてみるまで中身は分からない」
 かつて田口さんが舞台の仕事でフォレスト・ガンプを演じたことがあるため、自分の経歴を調べてくれていたと当初は思った。しかし実際は平田さんはその事実を知らず、飽くまで「自分の好きな台詞」として取り入れてくれたとのこと。(素敵すぎる偶然だ…)
 

■制作過程

・平田義久さんは田口さんからのオファーによる参加。一番最初に田口さんとやり取りをしたボカロPさん。
・2019年11月に企画をスタートしたが、それより更に前の7月頃に平田さんから田口さん宛にDMをくださった。「何かお力になれることがあれば仰ってください」と。(あの一件の真っ最中ですね…)平田さんは元々電波工作で田口さんとの関わりがあり、その時にお世話になった恩返しがしたいという思いがあった。田口さんも電波工作で繋がったご縁を何か形にしたいと思っていたので、11月に楽曲提供を依頼したい旨返信した。
 平田さん「田口さんもそうですし、田口さんのファンの方にも良くして頂いたので、ようやくその恩返しができるなと」
・去年の事があって、それでも自分に声をかけてくださる方がいらっしゃったことがとても励みになったという田口さん。
・オファー枠と公募枠があったが、公募枠も150人を超える応募があったことが嬉しかった。自分がハブのような存在になって、ボカロ界と自分の間で音楽の広がりを見せていけたらと強く思った。
・制作にあたって、平田さんとは喫茶店で直接お会いした。
 平田さん「めっちゃ脚長かったですよね。知ってます?ボーカロイドリスナーの間では田口さんは脚7メートルあることになってます」
 (田口ファン界隈の常識がボカロリスナーの間でも広がって且つ本人に伝わっているの面白すぎ)
・田口さんと音楽制作している旨を周りの友人に伝えると、皆ビックリするという平田さん。
 平田さん「まさかですよね、あの田口淳之介と」
・曲を田口さんに送った際に色々ディレクションが入ったが、全て「確かにこの方が良いな」と思えるような的確なものだった。対応も柔軟なので割と好きにやらせてもらえた。
・田口さんから「これは男女のデュエットになるとカッコイイ」と感想を頂き、平田さんにも同じ思いがあったので、ミクさんとのデュエット曲となった。
・田口さんとミクさんの声のハーモニーが驚くほどしっくり来た。平田さんが田口さんの録音した声にピッタリ合うようにミクさんの声を調整した。
 

■平田義久さんのこと

・音楽作家&映像作家。ジャズやR&Bに根差したボカロ曲「mellowシリーズ」をリリースしている。
・田口さんとは「田口淳之介の電波工作」で以前から関わりあり。参加もしたが、1リスナーとして楽しく拝聴していた。
 平田さん「アレの為にradikoプレミアム入ったのに以後全然使ってないです…」
・平田さんのmellowシリーズの特徴は、夜特有の雰囲気のある独特な曲調。夜といえば、感傷的になったり相手を想ってほっこりしたりする時間であり、平田さんはその感情を上手く曲に表現してくれる。
・最初にメールのやりとりをした時、平田さんはかなり落ち着いた方なのでおそらく自分と同い年か年上だろうという印象を抱いた田口さん。でも実際は田口さんよりかなり若い「青年」だった。年齢の割に達観していたので距離感もそこまで感じず、安心して話せた。
・対談でご一緒した左手さんとはただならぬ関係。「しゃべるボカロとボカロP」という平田さん主催の企画でも共演。
 田口さん「ブンブンブブブンのくだりとか超面白かったw」
・仲の良いボカロPは左手さんとねこむらさん。「泡沫金魚」で話題になったruluさんとも仲良し。
・音楽のジャンルはUKロックが好き。mellowシリーズで主題としているR&Bやジャズも聴いているが、かなり幅広い音楽を聴いている。
・他の楽曲で気になった曲はsavastiさんの「祈るほど後悔」と水彩画Pさんの「Cc:京都遊郭にて、空蝉。」。
 平田さん「水彩画Pさんに関しては『ヒヨってないな』と。田口さんへの楽曲提供という中でも全く己のスタイルを崩さず、でもカッコイイっていう」
 

■平田義久さんのオススメ楽曲

▼夜がはじまる

 
▼fallin' fallin'

 
▼東京は夜

 

■「stay with me」における田口さんのパフォーマンス

・ジュウゴノシンゾウLIVEでの歌唱が初めてかな?あの演出は本当に感動した。
 曲順では「路地裏探訪」「慣性スケーター」「閉花予想」といったアップテンポの楽曲から続くものだったので、ここからどう繋ぐんだ…?と思ったら、飛鳥さんのピアノパフォーマンスを間に挟んでそこから上手くしっとりした曲調に繋いでいた。
・歌う時は基本的に着座スタイル。スツールに座ってしっとりと歌うパフォーマンスが定着している。確かに、夜の雰囲気に浸る曲としてはそういうスタイルがピッタリ当てはまると思う。
・ジュウゴノシンゾウLIVEではそこまで着ていたスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めてリラックスした服装で歌っていた。(そこまで意識したかは分からないけど)ここも「夜」のアンニュイで落ち着いた空気感が出ていたと思う。
・ミクさんパートではミクさんの歌声に浸っているような表情や、後ろでピアノを弾いていた飛鳥さんと密かに笑い合う姿が微笑ましかった。そこにミクさんの姿はないけど、まるですぐ隣で歌っているような存在感を感じさせた。
 

■総括

曲も勿論素敵なんですが、何よりお二人の制作過程におけるエピソードに感動してしまいました。
ジュウゴノシンゾウspecial weekはリアタイで追えておらず、後追いでそれぞれの曲について把握させていただいたのですが、まさかこの企画が平田さん側からの発信によるものだったとは…。
いや、企画の立案自体は田口さんによるものでしょうが、最初にお声がけいただいたのがボカロ界隈の方からだったという事実を知った時は、驚きと感動が込み上げてきました。田口さんの復帰作はコスモシティというアルバムではあるものの、復帰後に一から作り出したものはこのジュウゴノシンゾウであるため、そのきっかけとなってくださった平田さんにはもう足を向けて寝られませんね。大変な局面の中、彼が復帰する上でそのお声がけが大きな後押しとなったことは間違いないと思います。本当に感謝してもしきれません。
 
そして今回、この楽曲は唯一田口さんの想いをエッセンスとして加えた歌詞となっています。
他の楽曲にどこまで田口さんのディレクションが入っているかは定かではありませんが、割と他のボカロPさんはご自身の思いを歌詞に込めている印象だったので、平田さんからわざわざヒアリングをしてくださってまで歌詞を書いていただいたことは大変貴重なものといえます。
この歌詞に含まれているのは田口さんご自身の「恋愛観」とのこと。タグラブで彼も深いところまで語っていましたが、彼の恋愛観において最たるものは所謂「純愛」。更にその内容を聞いてみた限り、彼の恋愛観はキリスト教における「アガペー」と限りなく近い思想であると私は感じました。
 
アガペーとしての愛は、価値や報いがあるからそのものを愛するというのではなく、無価値と思われるものをこそ愛し、はげまし、勇気づけてくれるものである。この愛は無差別平等の無償の愛として万人にそそがれる。
(アガペーとは)どんなに弱く、無価値のように見える人に対しても、常に無償で、無差別に与え続ける愛のことで、価値のあるものを求めるギリシャ思想のエロスとは対照的である。

 

…ちょっと難しい内容ですが、「アガペー」とは無償の愛、自己犠牲の愛と呼ばれるものです。
「自己犠牲」といわれると字面的に少し穏やかではありませんが、自分の損得勘定で計らない愛という意味では、彼が語っていた理想の愛の形に一番近いのではないかと。
 
神々が見放した長い夜」「巡礼者の詩も今は聴こえない」「彼らの罪と罰とを量ってた」という歌詞には、まるで夜の教会で祈るように歌っているような「神」の存在を感じます。(天使の羽が舞っているMVの演出もそれっぽい)
また、「どうか君に加護がありますように」というフレーズは「自分が相手を守る」というものではなく、飽くまで加護というのは神が与えるものであるという思いを感じ、そこが何とも彼らしいなぁと思うところがありました。
 
この楽曲は唯一の男女のデュエット曲ですが、男女間の愛というのは純粋に見えて実際は非常に利己的なもので、結果的には相手側の犠牲を要求することが多いように思うのが現実です。
「夜」を舞台にした「愛」の歌というのは割と有り触れていても、どちらかというと空しさや人間特有の身勝手さを感じるものが多いような気がして、最近平田さんが出された「ナイトドライバー」なんかはそれこそ”すべての最低な夜のために”描かれた、「stay with me」とは対極にある感情が全面に出ている印象ですね。
そういうアンニュイでネガティヴな雰囲気も決して嫌いではないのですが、どこまでも純粋な理想の愛の形を込めに込めた「stay with me」は、ある意味田口さんの歌う必然性を感じるというか、彼のエッセンスが平田さんの世界観に入ってきたからこそできた楽曲だなあと思います。
MVのラストに「フォレスト・ガンプ」の一節が出てきますが、主人公のフォレストもまた、如何なる時でもジェニーを愛し続けた所謂「純愛」の持ち主なんですよね…
 
多くの人は「本当の愛なんてないのだ」と思いつつも、現実に納得し満足しているかと言うとそうでもない。
損得勘定と関係なしに、損得を超えて奉げる愛があったらそれはどんなに尊いものだろうか。
そんな「神の愛」ともいえる壮大な愛を描いた、神聖な楽曲でした。
 

バッドエンドはハッピーエンドに成り得るか ―『閉花予想』を聴いた感想

実家から帰ってきました。

今日はもう寝ようかとも思ったんですがせっかくほろ酔いなので書きたいなぁと。
眠る前の暇つぶしにどうぞ。
 

■閉花予想 feat.アサイウミ

▼Lyric&Music:アサイウミ様

IllustChigu様

Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.


▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(アサイウミ ×savasti × 田口淳之介

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.9 -閉花予想-

 

■田口さんによるレビュー

・すごい青春を感じる。自分の学生時代を思い出す。歌詞の「君と歩くこの帰り道もこれで最後になるだろう」の部分に、甘酸っぱい思い出のようなものは誰でも感じられると思う。その時のことが全てで、毎日楽しくて仕方がないようなのが学生時代あるある。
・自分は学生時代から仕事をしていたのもあって、思い出はあるものの学園ドラマにあるような学校生活は送ってこなかった。その為、歌詞を聴いて「分かる分かるー!」って本気で言えないような部分は正直あった。
 田口「でも実際、これが青春だよなって」
・今会おうと思えばその時の友達にも会えるんだけど、あんまりそういう機会ってない。
 田口「同窓会とかにも呼ばれたことってないんだよねw」(田口さんの場合芸能人だからってのもあるかな…)
・自分の青春時代に戻りたいとは思わないけど、俯瞰して第三者の立場から見てみたいとは思う。
・今の子と自分とでは過ごした時代が違うので、青春時代の思い出も少し違う部分がある。自分の学生時代は辛うじて携帯はあったけど、今の子はLINEだし、自分よりもっと前になるとポケベルとか伝言板とかになる。でも、時代は変わっていっても価値観や人の気持ちはそんなに変わらないと思うので、世代に関係なく共感はできると思う。
・「ハッピーエンドよりバッドエンドが好き」というアサイウミさんの人間性が歌詞の切なさにも表れている。「開花予想」ではなく「閉花予想」なのがミソ。
・今まで仕事においても数々の別れがあったけど、その先の出会いもあった。「これから僕らそれぞれ違う道を歩いて」という部分には、終わりの切なさよりその先にあるものへの希望を感じる。
 

■制作過程

アサイウミさんは田口さんからのオファーによる参加。
・曲制作にあたって、田口さんが最初にお会いした時のアサイウミさんの印象は「イメージ通りの優しい人」。
アサイウミさんからの田口さんのイメージはリーガル・ハイの蘭丸。初めて生で動いているのを見た時はカッコイイオーラがあった。
・「デモを出すのが遅い」と自分で言った割に、デモを出してくれたのはアサイウミさんが一番早かったという田口さん。でもそこからの練り直しにはかなり時間がかかった。
・ジュウゴノシンゾウのメンバーを見た時に、ダンスミュージックを主としたオシャレな曲を書く方が多いと感じた。その方々と被らないように、ピアノとギターを前面に押し出した自分らしい曲を書こうと意識した。(このコメントを喋っているときに雨音に遮られてるの面白過ぎた)
 田口「一回整理していい?w」
・制作時は桜の時期だったので、桜の終わり際の切ない雰囲気をAメロとBメロで描いた。
・ラスサビの転調部分は田口さんも歌っていてすごく盛り上がって歌い甲斐があった。
 

アサイウミさんのこと

・爽やか切ないピアノロックをテーマに曲を作っている。ピアノとギターを使った楽曲を得意としている。
・歌詞には季節感やストーリーを取り入れて作っている。
 田口「アサイウミサウンドっていうかさ、スタイルが一貫してますよね!」
・「空とラムネ」は電波工作でも紹介した経緯あり。
・ボカロPデビューは2018年。対談で一緒に出演したsavastiさんと同期。
・楽曲制作はピアノから作ることが多いが、アコギから始めることもある。リリックよりメロディーが先行で、コードから作ることが多い。昔からのJポップが好き。
 アサイウミさん「中島みゆきさんとか結構好きでw」
・楽曲「夏が嫌いだ」は滅茶苦茶爽やかなピアノロックなのに、その中で「夏が嫌いだ」を連呼するのが印象的。
 田口「どういう気持ちでそのメロディーにその歌詞つけてんのかなってw」
 アサイウミさん「小説や映画からインスピレーションを得ることが多いんですけど、バッドエンドの作品が凄く好きで…」
 胸にモヤモヤが残る感じが好きなので、歌詞とサウンドとのギャップでその感じを出したいと思っている。
・他の楽曲で気になった曲は平田義久さんの「stay with me」。
 アサイウミさん「二人の歌声が上手く重なり合ってたので、それが凄く面白くて良い楽曲でした」
 

アサイウミさんのオススメ楽曲

▼空とラムネ


▼夏が嫌いだ


■「閉花予想」における田口さんのパフォーマンス

・個人的にアサイウミさんは「夏唄」というイメージが強いので、「春」の季節感を前面に出したのがリリース時期に合ってた。
・パフォーマンスで印象的だったのはやっぱりジュウゴノシンゾウLIVE。バンドスタイルで生演奏、という音の贅沢さが全体の厚みを底上げして、春の息吹のような力強さが強調されていた。(飛鳥さんのピアノ演奏が良い味出してましたよね。)
・「君が僕にくれたこの景色が」の部分でターンした時は桜吹雪の幻覚が見える。ダンスパフォーマンスではないけど身体全体で歌うような彼にこそ出すことができる雰囲気。
・パフォーマンスとは少し違うけど、配信でのコメント芸もこの曲ならではの特徴がある。いつからか画面全体に桜弾幕が流れるようになって、ライブだけではなくニコ生でも「閉花予想」が流れるとコメントが桜吹雪と化す。このコメント芸はニコニコの醍醐味だと思う。
 

■総括

アサイウミさんは電波工作の頃から個人的にもお気に入りのボカロPさんだったので、今回のアルバムのメンバーに入っていたのはすごく嬉しかったですね。
田口さんが「今日のボカロ」タグで取り上げていた「空とラムネ」は、ピアノの旋律の美しさに感動して何回も聴いてしまいました。
その後対談で話題に上がった「夏が嫌いだ」は本当に歌詞のネガティヴ感に中毒性があって、これも最近ずっと聴いてます。
季節感のある曲は大好物なので、「閉花予想」は春の唄として懐かしさを今後覚えていくような楽曲に昇華していく予感がします。
 
「ハッピーエンドよりバッドエンドが好き」というアサイウミさん独特の価値観。
田口さんはそこはイマイチ共感できない部分があったようで…「やっぱり終わりが気持ち良くないと!」って彼が仰っていたのは私も分かりますねぇ。(年取るとハッピーエンドが好きになる説)
でも、どんなに悲しい結末であったとしても、物語としてきちんと伏線が回収されていて、ラストまでの布石として必要なものであればバッドエンドも悪くないと思います。
逆に、今までの展開を丸無視したような無理やりな終わり方だとどんなに大円団でもモヤモヤが残るなあ…
例として、「キャラが死んでしまう」という展開はバッドエンドの一種ですが、意味不明な復活なんかされると「そこは死んどけよ、展開的に」なんて思ってしまいます。(酷い)
 
基本的に、物語と言うのは所謂書き手が「これで完結です」と宣言しない限り続きがあり得るものだと私は思っています。
小説には続編があるし、アニメには二期があるし、ゲームだとⅡがある。
田口さんがタグラブでも語っていた「終わりの切なさよりその先にあるものへの希望を感じる」っていう感想は、この「閉花予想」にもそういった「続編」が含まれているように感じたってことかな。
「閉花」っていうと桜の終わり際を指す言葉で、ちょうど卒業シーズンの「終わり」を感じさせる時期でもあるんですが、今年終わった桜も来年にはまた咲くわけだし、卒業は人生の終わりではなく寧ろこれからの始まりの前段階ですからね。
よってこれは決してアサイウミさんの好きな「バッドエンド」ではないんじゃないかなと思うのが正直な所感です。
 
私は田口さんほど稀有な学生時代を過ごしてはいませんが、あまりその頃に良い思い出はないので、学生時代の卒業に悲しさや切なさを感じたことは全くないです。
けど、田口さんが前の事務所を「卒業」するときは本当に悲しかったし切なかったんですよ…。ここに来て初めてその感覚を思い知りました。全く罪な存在ですね。
例の11月から3月までの言いようのない感情は今でも忘れられません。「終わりが近づくほどに綺麗になっていく思い出」って歌詞がある意味では突き刺さるような期間でしたよねえ?(と、その頃からのファン勢に問う)
そして4月にあっさりSNSに姿を現したのは、今思えば彼の芸能活動の「二期」への予告だったんだなぁと思えて少し笑ってしまいます。
 
その「二期」の終わりはあまりにも悲しすぎて、納得いかないバッドエンドだった…と大多数の中ではそう締めくくられていますが、それでも作者本人が「これで完結です」と言い切らなかったところに僅かな希望を見出していた方もいたのではないでしょうか。
バッドエンドにしたってあまりに雑な終わり方なので、そこはきちんと回収してもらいたいという意味で、私は一旦続編を待つことにしました。
そして、そこから少し(とも言えない)期間を置いて、本当に色々あったけども、今はこれまでと比較するとかなり常識破りな三期に突入しているようです。
一期からは時代がかなり変化したので、あの頃からは考えられないような演出やストーリー構成で個人的にはかなり面白い展開になっています。かなりの読者が離れてはしまいましたが、私個人はここまで見届けて良かったなぁと。
 
一期が盛り上がった作品ほど、その続編で初期のような盛り上がりを取り返すのは難しくて、「面白いけど一期ほどのワクワク感はないかな」という感想が並ぶのが一般的ではあります。
それでも作品が続いていく限りはもう一発当てるチャンスはいくらでもあって、少し情熱が薄れていた読者も展開によっては戻ってくる可能性があるんですよ。
…えーっと、回りくどい表現をせずに言うなら、彼にはもう一発咲いて欲しいと思うわけです。
 
その年に散った桜も、来年にはもう一度必ず咲くことができる。
それは当たり前に起こることではなく、周囲の環境から守ってくれる様々な力によって桜の木が冬を乗り越え、再び春を迎えることによって起こる奇跡の現象。
 
その時はバッドエンドであっても、時間を超えてハッピーエンドを迎えることができる”強い生命の力”を感じるような、美しい楽曲でした。
 

慣性と惰性 ―『慣性スケーター』を聴いた感想

お久しぶりです。

ここ数日職場でトラブル発生(内容は自業自得)につき全く書けず…
いい加減書き方を忘れそうでしたがやっと収束に向かってきたのでいつもの如く酔いながら書いてます。
お時間のある方はお読みください。
 

慣性スケーター feat.シシド

▼Lyric&Music:シシド様

Movie葉月ひよこ様
Vocal(ボカロ版):flower
 
VOCALOID Ver.


▼田口さん歌唱Ver.


▼アルバムに参加した感想は?ボカロPアンケート!

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.8 -慣性スケーター-

 
 

■田口さんによるレビュー

・イントロのギターがカッコいい。シシドさんの「真夜中狂騒曲」が田口さんには刺さった。このギターの音色と残響感は絶対に入れてほしいとオーダーした。
・サビに入る前のキメの部分、歌う時のリズムの取り方は今までの自分の曲にはなかった雰囲気。「クールさ」を意識したダンスミュージックを今までずっとやっていたが、今回のバンドサウンド調の楽曲は「声に想いをぶつけるような歌い方」が活きるジャンル。
 田口「今後はこういうバンドスタイルの楽曲も増えていったら嬉しいなって」
・「肩肘張らずに自分のままで生きてればいいんじゃないの」というメッセージが込められたリリック。そのメッセージは自分の今までの生き方にもリンクした部分があったと思う。(詳細は総括に記載)
・憧れや嫉妬に駆られる中でも、自分自身のペースで歩いていくのがいいんじゃないかと解釈した。
・MVが可愛い。女の子がワイルドな座り方をしている絵とスケートボードが特徴的。
 

■制作過程

・シシドさんは公募による参加。
・田口さんがオーダーした通り、イントロからギターのパワーを感じる楽曲に仕上げてくださった。
・歌詞に込めた想いを簡単に言うと、「肩肘張らずにいれたらいいなと思って」書いた曲。皆さんそれぞれ感じたままに聴いてもらえると嬉しい。
・普段一人で完結していたものが、人に歌っていただいて完成するのは初めての経験というシシドさん。また、15人集まって一緒に作る作品と言うのは非常に刺激を受けることができた。
 シシドさん「今回はありがとうございました、またお力になれると嬉しいです」(本当にお力になってくださるとは)
 

■シシドさんのこと

・シシドさんの楽曲は部屋の中でビャァァンと響くような、残響感のあるギターが特徴。アーティストさんで言うとルナシーさんに近い。
・他の楽曲で気になった曲はノイさんの「フライアウト」
 シシドさん「爽やかなギターサウンドとノリの良いビートが印象的でした」
・ノイさんとはお互いにギターを弾くもの同士惹かれ合うものがあるのかもしれない、と田口さん。(実際Twitterでも何度かギターについて会話しているのを見てほっこりしました)
・秋頃にアルバムリリースを目指して現在制作中。
 

■シシドさんのオススメ楽曲

▼真夜中狂騒曲

 
▼劣性ポップ

 
▼イマジナリィ

 

■「慣性スケーター」における田口さんのパフォーマンス

・なんといってもジュウゴノシンゾウLIVEでのシシドさんとの共演でしょう。バンドメンバーが紹介されたときはその錚々たるメンバーに感動した覚えがあります。
・水彩画Pさんが登場する前までのギター担当として出演してくださいました。その後水彩画Pさんが加わった後もニライカナイで楽しそうにお二人で向かい合って弾いてる図が良かったですね。
・ロック調の曲なので音サウンドに重きを置いたバンドスタイルでのパフォーマンスが特徴。6月の月イチLIVEでも歌ってましたがやっぱりバンドメンバーが揃っていた方が迫力がレべチです。
・実際にお姿を拝見した者としての感想は、ギタースキルの非常に高いウサギさんでした。
・曲を披露した後にシシドさんのコメントあり。
 シシドさん「バンドで演奏して、改めて曲として完成した感じが新鮮で楽しかったです」
 

■総括

田口さんが得意とした身体での表現より、声と言葉での表現が印象的な楽曲でしたね。
ジュウゴノシンゾウにはロック調の曲が何曲か織り交ぜられていますが、「慣性スケーター」は特にリアルなメッセージ性を感じるものでした。
そもそも「慣性スケーター」っていう曲名がもう唯一無二で、他にいくら探してもこんな曲名はないであろうというインパクトでした。
シシドさんの他の楽曲には「劣性」とか「慢性」とか、『性質』に関するワードが良い具合に散りばめられていて実に興味深い。
ちなみに今回の「慣性スケーター」は、タイトルには『慣性』、歌詞の中には『惰性』という言葉が入っています。
うーん、何となくの意味は分かるんだけど説明しろと言われるとちょっと難しい言葉ですな。
でも、タイトルと歌詞で違う言葉を使用しているということは、制作者であるシシドさんの中で、この二つは意味の異なるものとして捉えられているのは明らかであるように思います。
ちょっと面白そうなので、慣性と惰性の違いについてネットで色々検索してみました。
 
 
「惰性」も「慣性」も、同じ状態や動きを続けていくという意味では、同じ意味を持つ言葉だと言えます。しかし、「惰性」の場合は、人間の行動に対して使われるケースが多く、またやる気やモチベーションなどの感情の有無について表現するニュアンスも含まれています。一方で、「慣性」の場合は、人間の言動や感情よりも、あくまでも物質の動きや状態を意味するニュアンスが強いと考えられます。
 
「惰性」の類語【1】:だらだらと
「惰性」の類語【2】:漫然と
「惰性」の類語【3】:習慣
 

慣性とは、物体が外的な力を加えられない限り、同じ運動を続けようとする状態のことである。電車が発進した時に、体が後ろに引っ張られるように動いてしまうのは、今までいた場所に居続けようという慣性が働いているからである。逆に電車が停車した時に、体が前に引っ張られるように動いてしまうのは、今まで前方方向に動いていた運動を続けようとする、同じく慣性が働いているからである。
惰性とは、今までの動きや行動を、行い続けることである。その為「慣性」と同じように使われることもあるが、「慣性」よりも感覚的なものである。また、動き続けようとする「慣性」を「惰性」と表現することはあるが、停止し続けようとする「慣性」のことを「惰性」とはいわない。
 

 

 

……ちょっと何言ってるかよく分からない。
でも自分なりの解釈で言うと、「慣性」はブレない部分はありつつも外的要因によっては柔軟に動きを変えることがあり得るもので、対して「惰性」は「変えようとしない意識」が無駄に働いているような印象がありますかね。物質の動きのニュアンスが強い慣性より、惰性は人間の感情が多く含まれている言葉だと思います。性格でいうと頑固な人。
 
そして、その「頑固な人」に当てはまる田口さんが、タグラブで歌詞の解釈について随分と深く語っていらっしゃいました。
基本的に明るくて浮世離れした彼が、ここまでリアルな感情を吐き出すのって相当レアです。(と私は断言できる)
以下、印象に残った田口さんの言葉。
 
 
・『こうでなきゃ駄目だ』とか『こうあるべきだ』という変なこだわりや完璧主義がある。
 でもそれってあんまり良くないな、と最近考え方に若干変化ができた。
・割と何でも自分の定規で測ってしまう自分の性格に『それって押し付けだよな』と思い、改めようと思った。
 気づいて間もないので、今まで34年生きてきてその性格がどう治るかは分からない。
・すごいスケジュールを詰め込んじゃったりとか、忙しくしたいのか分からないけどそういう癖がある。
・そんな無駄なこだわりを削ぎ落していったら少しは楽になるのかな、と思う。
・遅刻や納期の遅れは基本的に好きじゃないからミスしたくない。
 でもしっかり準備したつもりでもミスは起きる。そういう時に10分ぐらい悶々と考える。だけどその時間あれば他に何かできたと思う。

 

つい最近シャレにならないミスを起こしてしまった自分には刺さりすぎて痛いぐらいのトークでしたね…
ミスを起こしやすい人って注意力散漫とかだらしがないみたいに思われがちですが、逆に真面目過ぎるが故に、無駄に考えすぎて細部に漏れがあるようなパターンが意外と多いです。
失敗しないのが一番良いんでしょうけど、一度転んで傷を負った人はその傷を知恵に変えることができる。(と、今回ミスをして謝罪した私に上司は言った)
この曲が言うところの×(バッテン)というのはそんな失敗による傷を指すものでしょうか。
 
彼みたいな仕事をしてたら、「こだわりが強い」というのは決して悪いことじゃないです。そのこだわりが音楽性や個性に繋がるわけだし、寧ろそれをいち早く見つけた人だけが生き残れる場所です。
でも、その自分のルールに雁字搦めにされてしんどくなって、潰れてしまうようじゃ世話ないですよね。
上記で拾った言葉から読み取ると彼は相当なストイックなので、「惰性」なんて言葉とはあんまり紐づかないように思いますが、その性格を34年間全く変えずに生きてきたのはある意味「惰性」なのかもしれないなと。
 
しかし何らかの外的要因により、今までの運動を変えようとする「慣性」が働いたことも分かります。
その要因が何なのかは定かではありませんが、個人的にはその慣性に従って良いのではないかなと強く思いました。
ぐうたらな人がストイックになるのは難しいけど、ストイックな人がぐうたらになるのはもっと難しい。
でも一度勇気を出してぐうたらになってみて欲しいです。世界が変わるぞ、ガチで。
 
飽くまで軸足はブレずに、でも自分が辛くなるほどの肩肘は張らずに、柔軟に。
多分、そう最初は上手くいかないと思う。けど、そういう時は遠くの方でも見ながら、あまり考えずに流れに身を任せたら良いんじゃないかな。
そんな安定感と不安定感を感じた、スピード感のある楽曲でした。
 

要らなきゃ私がここで守ってやるよ ―『路地裏探訪』を聴いた感想

夕方はかなり涼しくなってきましたね。

コークハイで晩酌しながら書いてます。田口さん、グッズでマドラー出してくれないかなぁ…(いつもすぐ無くす)
暇なときにお読みください。
 

■路地裏探訪 feat.るりまる

▼Lyric&Music:るりまる様

Movieそふりど様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 

 ▼田口さん歌唱Ver.

 
▼アルバムに参加した感想は?ボカロPアンケート!

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.7 -路地裏探訪-

 

■田口さんによるレビュー

・映像がとにかく凄く凝ってて印象的。リリックの内容に合わせてカラスやゴミ箱や空気入れなんかが色々出てくる。カラスが擬人化したような女の子がニヒルな笑いを浮かべてて可愛い。
 るりまるさん「最高ポイントがたくさんあって書ききれないです。以前から一緒に制作したかったそふりどさんと共作出来て本当に嬉しかったです」
・「路地裏探訪」というタイトルに惹かれて聴いてみると、歌詞と映像の世界観に引き込まれる。薄暗い路地裏のジメっとした感じの雰囲気で、”風刺というか世の中の暗い部分”をウエットに表現している。
 るりまるさん「10倍強ぐらいに希釈していますが、『後ろ指を指す人は放っておいて前に進みますね、バーイ!』っていう主題です」
・間奏明けのサビに入ったところに琴の音が入ってる。ここはボカロ版の方が分かりやすい。MVのカラスがくちばしでツンツンしてるのは大正琴っていうらしい。
 田口「ジャズという洋楽要素の強い楽曲に日本の楽器の音が入るっていう音遣いのセンスが凄い」
・詰めるだけ詰めたようなリリックなので活舌と強弱のつけかたが難しかった。
・歌詞はボカロ版と田口さん版で若干違う。ミクさんは女性なので女性口調、田口さんは男性なので男性口調なところが一部ある。
 

■制作過程

・るりまるさんは公募での参加。
・田口さんが聴いたるりまるさんの楽曲で一番のお気に入りは「サカサマアストロノーツ」。ああいうポップでキラキラした感じが良いと田口さんからオーダーしたが、るりまるさんは「もっとジャズで田口さんの踊りが映えるような楽曲を作りたい」と言ってくれた。
・最初にデモを頂いた時、これはジュウゴノシンゾウの中で唯一のジャズであり、異色感があった。
 田口「ジャズってちょっと玄人感あるよねw」
・るりまるさん自身ダンスの経験はないが、曲全体をライブで想定した時に、(田口さんの)長い手足を活かしたキレのあるダンス、ゆったり大きく見せるダンスを意識して制作した。
・田口さんの前作「COSMOS CITY」を聴いた際、ジャズ風の曲が無かったのでさらなる魅力を、と思い制作した。
 

■るりまるさんのこと

・るりまるさんの楽曲は全てにおいてトラックメイクのセンスが凄い。曲調はポップだけど細部の音の作りに玄人感が出ててカッコいい。
・ボカロの調整も上手い。ボカロなのにビブラートがあんなに表現できることに驚いた。
・タイトルで「どんな曲なんだろう?」と思って、実際聴いてみると歌詞の情景・世界観にすぐに引き込まれる。
・ベースラインの使い方がめちゃくちゃカッコイイ。流れるような音階と耳に残るメロディーがとにかく気に入って、そんな疾走感のある曲をお願いしたいと思った。
・田口さんからお話を頂いた時から「あんなことやろう、こんなことやろう」とアイデアがたくさん出てきて上手くまとまるか心配だったというるりまるさん。全員分の曲が上がった時、各製作者の個性が全面に出てて超いいアルバムだと思った。
・他の楽曲で気になった曲は左手さんの「DIDA DIDA DIDA」
 るりまるさん「左手さんの曲はいつもメロディーが好きです。田口さんの良さが活かされたメロディーラインだと思いました」
 

■るりまるさんのオススメ楽曲

▼サカサマアストロノーツ

 

▼Melon Ball

 

▼死んで花実はなるものか

 

■「路地裏探訪」における田口さんのパフォーマンス

・曲順で言うと折り返しに近い位置にある曲ですが、曲順のセトリで行ったジュウゴノシンゾウLIVEの路地裏探訪の盛り上がりは本当にヤバかった…
・製作者のるりまるさんがLiveintroなるものを別個で作成くださっているのですが、このイントロが鳴り出した時の「二度目の始まり」って雰囲気が凄かったなあ。あのライブはバンド形式なんですが、7曲目にしてようやくバンドメンバーが登場するんですよ。コロナの関係で現場にいる人も声は出せないんですが、このLiveintroに入っている歓声のようなサウンドもあってか配信ライブ感が無くてすごい盛り上がりを感じました。(LiveintroはるりまるさんのTwitterを辿ってみてね)
・LIVEではダンスの披露はありませんでしたが、そのあと別の形でダンスパフォーマンスをしっかり見せてくれました。
 
▼【田口淳之介&えとう】路地裏探訪feat.るりまる 踊ってみた【オリジナル振付】


 ・撮影自体は7月中に行われていたのですが、お二人が何を踊ったか知ったのは公開直前でした。えとうさんと何を踊ったのかずっと気になってたけどまさか自身の曲の二次創作だったとは!笑
・ボカロ版と田口さん版はキーが違うのですが、この為にミクさんの声のキーを調整し、田口さんとミクさんのデュエット版としてるりまるさんが作成してくださいました。なんという至れり尽くせり。
・衣装はいつも通りACUOD by CHANUさんのお揃い衣装。田口さんが着てるジャケットは体感3キロはある超重いヤツらしい。多分曲のMVにも出てくるカラスをイメージして選んだものだと思います。 
・ジャズはやっぱりステップが映える!ニコニコは定点カメラだけどYoutubeは足元を特に重点的に映してくれている気がします。曲のリズムに合わせたダンスとステップ、所謂「音ハメ」の美しさこそが彼のダンスの魅力だとずっと前から思っています。リズムに合わせて踊るなんて一見当たり前のことだと思うかもしれないけど、その「当たり前」を当たり前にできる人って意外に少ないんですよ。
・凝った編集だけど背景は真っ白で、所々にそふりどさんのイラストが上手い具合に入っているところに本家へのリスペクトを感じます。カラスかわいい。
・約20センチの身長差が活きている振り付けと位置取り。
 
▼【メイキング】路地裏探訪 feat.るりまる 踊ってみた【田口淳之介&えとう】


 ・振り付けは7割ぐらいえとうさんが考案したものだそうです。えとうさんが約半日かけて作った振付を約15分で振り入れした田口さんを見て度肝抜かれたとか。見ただけで動きをコピーできるってどういう脳の作りなんでしょうね…
・途中で勢い余ってネックレスを千切ってしまう田口さん。これね、初めてじゃないんですよ。前にもELECT踊ってみたでやってるしなんならそれより前にもライブで千切れたネックレス客席に投げてなかったっけ…
・えとうさんのダンスはクールでカッコイイ、と田口さん。女性の踊り手さんは可愛さやファンシーさを前面に出している中、えとうさんはクールな魅力があると。確かに路地裏探訪という曲を二人で魅せるには最高のコラボ相手だと思いました。田口さんよりだいぶ小柄なのにダンスの勢いが負けてなくて、身長差や性別の違いがあっても所謂シンメは成立するものなんだと、そんな新発見がありましたね。
・ファンからのコメントでちらほらあったけどタップダンスしながら踊って欲しさあるよね(希望)。これからの月イチライブの演出に期待。
 

■総括

いやー、聴けば聴くほどに魅力の増すスルメ曲ですね、この楽曲。
曲順で言うと「Miss you」と「慣性スケーター」の間という物凄く難しい位置に入ってくる曲なんですが、ライブでの流れと魅せ方が最高過ぎて自然と曲順まで脳裏に焼き付いています。思えば、J時代も含めてアルバムを今までたくさん聴いてきたのに、アルバムの曲順を空で言える自信があるのはこのジュウゴノシンゾウだけかもしれないです。
 
軽快なリズムやノリの良さが最初は耳に残るのですが、歌詞の内容も濃度が高くて興味深いですね。
「後ろ指を指す人は放っておいて前に進みますね」というメッセージを受け取った時は「それで10倍強希釈なのか…」と思うぐらいの濁った思いを感じました。原液はどれだけ濃いんだろうか。
 
前5曲が割と人間らしい感情を歌詞にストレートに書いている印象だったので、ここに来て初めて「人ではない何か」が語っているような異世界感があって、解釈が物凄く難しくなりました。でも、そういう曲って自分なりの正解をどうにか見つけようと何度も聴いてしまうんですよね。これぞスルメ曲の醍醐味。
 
田口さんとのコラボということを抜きにしても「路地裏探訪」なんてタイトルは嫌でも目に焼き付くし、どんな曲なんだろうと思って思わずサムネイルに手が伸びます。「路地裏」という場所に足を踏み入れることは日常生活ではあんまりないと思うんですが、一応どんな雰囲気の場所なのかの想像はつきます。人通りの少ない建物の影・「表通り」に面していない場所・ゴミ捨て場…。MVのイラストもそういうイメージ通りで、カラスがターンテーブルみたいに擦ってるものが実はボロいガスコンロだったり、「銃撃事件」のピストルが水鉄砲みたいだったりして、そういう遊び心が面白いんです。途中途中で出てくるカラスにも、ニヒルな笑みの女の子にも共通して縫い目のような跡がある辺りは、「食い散らかされてバラバラになった跡」なのかなって色々想像力が働かされます。
 
汚いものも消費期限切れも全部ここに置いていきなよ」というフレーズから「ゴミ捨て場」というイメージが湧きあがりますが、「捨てていきなよ」ではなく「置いていきなよ」という言い方なのはちょっと気になりますね。
そしてその後にも「要らないものも壊れたものも全部ここに忘れていきなよ」と。ここでも「捨てる」という言い方はせず、「忘れていきなよ」という言い回し。「ゴミとして捨てられたもの」というのは、持ち主がそこに手放した時点でこの世から消え去る運命のものですが、「置いていったもの」「忘れていったもの」はまたそこに戻ってきた持ち主が再び出会う可能性があります。
この路地裏にあるものは、これから表通りを生きる上で持っておくには少し邪魔になるけど、捨てられないならここで守ってやろう、という「酸化した思い出」なのかなって全体の歌詞からそう思いましたね。
単に要らなくなったものだったり、過去を払拭するためにやむなく放り出したものだったり色々あるんでしょうが、それは手放したとはいえかつての持ち主の想いがたくさんこもっていて、寧ろ「自分自身」を含んだものでもあります。そんな多くの人の掃きだめが「路地裏」って場所なんですかね。
 
ひょんなきっかけで主人公が足を踏み入れた「路地裏」は決して遠く離れた場所ではなく、寧ろ煩い換気扇一つで遮られただけの身近な場所です。
そこに入った時、自分がかつて遠い昔に手放したものに出会うこともあり、今手元にある要らないものや壊れたものをまた手放すこともある。そんなガラクタたちを今になって「探さないで」欲しいし、でも「乾かないで」欲しいというなんとも複雑な矛盾した感情。
暗い路地裏から飛び立つ主人公に「心配ないよ」と手を振っていたのはこの路地裏の主みたいな人でしょうか。
 
前進するために枷になるものは一旦ここに忘れて行って、前に進んで行こう。持ち歩くには重いけど、決して捨てたくはない。なら、この路地裏で守っておいてもらってもいいのではないか。
もし、いつかまた遠い未来でこの路地裏を訪れた時には黴臭い内緒話でもしようか、とカラスの群れに交じって飛び立つような気持になった楽曲でした。
 

優しいだけの君じゃなくても ―『Miss you』を聴いた感想

久々に夜に書いてます。本当ならこの時間お仕事だけどトラブル続きの毎日の久々の休息。

甘い炭酸と塩辛いツマミをお共に書きます。
レビューっていうかただの公式のまとめなんだけどこういうのが書いてて面白い。
 

■Miss you feat.shino

▼Lyric&Music:shino様 
Illust7716様
Vocal(ボカロ版):初音ミク
 
VOCALOID Ver.

 
▼田口さん歌唱Ver.

 
▼ボカロP対談(shino×水彩画P× 田口淳之介

 
▼”TA”Good Night LIVE vol.6 -Miss you-

 

■田口さんによるレビュー

・全曲をティーザー公開してから「Miss you」へのコメントや反応が多い印象。
・まずはやっぱりサビが聴きどころ。伸びが良くて歌っていて気持ち良い。
・皆の耳に馴染みやすい王道Jポップの路線を狙おうと打合せでも話した。
・EDMやロック等ジャンルが様々ある中、ポップスをメインにされている方がいなかったので他のPさんとも被らないように敢えて王道を攻めていった。
・全体的に音域が広い。Aメロは低い所から入って、どんどん高くなっていくのがJポップらしい。トップの部分でキー調整をしたが、そうするとAメロは物凄く低くなる。自分が今出せる音域をフルに使った曲だと思う。
・最後の「僕じゃ幸せにできない」は切なさの象徴。でもその最終サビの転調には切ない中にも爽やかさがある。
・一番最後の歌詞にはその先の未来を感じさせるものがある。
 田口「なんかアンサーソングとかありそうだなって」
 

■制作過程

・shinoさんは公募による参加。
リツイートで今回のプロジェクトを知って、速攻で応募した。
 shinoさん「これは速攻送らなきゃ!って」
 途中で「100曲以上(応募曲を)聴いている」と田口さんがツイートしているのを見た時は、余りの多さにほぼ諦めていた。
・最初は「明るめポップ」でオーダーしたが、最終的にはむしろ「切なポップ」になった。
・制作にあたり、田口さんのアルバム「COSMOS CITY」の曲を何度も聴いた。それを聴きながら「自分が田口さんに歌って欲しい曲」と考えていたら自然とこういう形になった。
・shinoさんは転調大好き。その転調サビこそ盛り上がりの頂点だと思うので、そこが一番気持ちよく歌えるようにキー調整。
・なかなか人間に歌ってもらう曲を作ったことがないので、音域についてはshinoさんも試行錯誤した。
 shinoさん「すごく難しいことをさせてしまったと思うんですが、カッコよく歌って頂いて…」
 

■shinoさんのこと

・3年ほど前からボカロPとして活動していて、普段は初音ミクを使った楽曲をメインに投稿。
・田口さんはshinoさんに直接お会いしたことは無い。でもツイキャスに田口さんが一方的にお邪魔したりして、声から心が澄んでいそうな雰囲気を感じている。
 (shinoさんは)他のリスナーさんともお会いしたことはないが、そこまでミステリアスにするつもりはない。
 水彩画Pさん「shinoさんあれですよ、ヘッドフォンつけてくるのかなって思いますよ」
・まだ学生で若い方なので、書くリリックにピュアさと清涼感がある。
・最近は「歌ってみた」の活動も行っている。本家の良さを生かしつつ、アレンジをどう入れていくかという面白さがある。Eyeさんに誘われて作ったコラボで、ドカンとハモるような部分は原曲を聴きつつ自分らしさが最高に出せる。
・高校の軽音部でバンドをやっていたが、ミックスに触れたのはボカロPを始めてから。
・世の中とボカロ界の音楽シーンの流行が少しずつ連動している印象はある、とshinoさん。ボカロのセルフカバーも流行っているが、自分はあくまでもボカロをメインにやっていくつもり。
・これから活動する方にメッセージを送るとしたら、「自分らしさ」を見つけた人が生き残る世界なので、そこが一番大事だと思う。
 shinoさん「僕は未だにそこで迷ってるんですけど…」
・他の楽曲で気になった曲は平田義久さんの「stay with me」
 shinoさん「今回のアルバムのコンセプトはボカロPとのコラボなので、コンセプトが際立つ一曲だと思った」
 

■shinoさんのオススメ楽曲

▼バケモノの唄

 
アルストロメリア

 
▼匿名希望


■「Miss you」における田口さんのパフォーマンス

・スタンドマイクを使ったパフォーマンスが印象的でしたね。ジュウゴノシンゾウLIVEでもダイヤモンドフェスでもそうだったので、彼にとってそういう魅せ方のイメージなのかな。でもそのスタイルでも全身で歌っている感じがして好き。
・曲順で言うと「DIDA DIDA DIDA」の後に来る「サタデーナイトクルージング」と「Miss you」は、どちらかというと「聴かせる曲」という印象が強いので、盛り上がりの間の浸れる間という感じがする。
・音域が広いので生歌はAメロが一番難しそうに見えた。でも自分の声域で一番いい部分をサビに持ってきてるのはすごく伝わってきて、声の伸び方が気持ちよかった。
 

■総括

田口さんの仰る通り、私の感覚値でも「好きな曲」「気になった曲」として田口ファン勢から特に名前の挙がってた楽曲だと思います。
メロディーも覚えやすいし、歌詞もストレートで分かりやすい。それに、田口さんと「切なポップ」って意外に相性良いんだよなあ。
「田口さんに歌ってほしい曲」として作ってくださったという素直なshinoさんの思いが何より嬉しいです。
 
「Miss you:貴方がいなくて寂しい」という訳通りこれは別れの曲ですね。
モノクロの夜景をバックに佇んでいる青年、逆光であんまり見えないけどよく見ると涙を浮かべた表情になっています。
変わらないこの街も空も人も僕らを置いて」の部分には、MVの背景の夜景が表すような広い世界を感じさせました。
今ここで自分が涙を浮かべながら相手を想っていることも、この無数の窓の光から成り立った夜景から見るとほんの一欠片の部分でしかないというか…「自分が悲劇に陥っている間も当たり前のように世界は進む」ということを物語っているような感覚でした。
「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇だ」という名言がありますが、この主人公は正にクローズアップで見た時の悲劇の象徴なんだろうなあと。
 
田口さんが「なんかアンサーソングとかありそう」って感想を述べてましたが、私はこの曲を聴いて「雨の日だけ人間になれるカエルさん」を思い出したんですよねー!音域の広さといい切なポップってジャンルといい(分かる人にしか分からない内容)
これはきっと初めから決まっていた」とか「ラクタ仕掛けの恋」とかね…。
君の涙がふと目に焼き付いてしまった」は、あの曲のMVで静かに泣いていた彼女を思い出します。
最後に、雨が止んで彼はいつものカエルの姿に戻るのですが、「僕じゃ幸せにできない」という思いは喋れないながらも感じてたんじゃないかな。
 
そんなわけで久々にRaindropsを聴いてしまったわけですが(言っちゃったよ)
「ここにいるのに通り過ぎてく、何も言わずに」と「二度と触れないのに」と言っていたのは同一人物のように感じてしまいました。
いや、歌っている人間は間違いなく同一人物なんですが。
この場合どっちが「アンサーソング」と言えるのか、時系列が整理しにくいところではありますが、「叶わない恋」であることは両者に共通していて、それも叶わない理由が理由なので余計に切なさが際立ってしまいます。
 
制作者のshinoさんが聴かれたのはCOSMOS CITYとのことですが、そことは違う別のアルバムの曲とのストーリーの連動性と、言い表しようのない切なさと深い愛情を感じた、不思議な曲でした。